第64話 光盾庭球・決勝戦――光と水の攻防
敗北したリリナとカイルは、ベンチに並んで腰を下ろした。
「カイル様、ありがとうございます。
負けてしまいましたが……とても楽しかったです。
ペアがカイル様で、本当に良かったです」
そう伝えると、カイルはぱぁっと顔を明るくした。
「じゃあ――ペア名、決めましょう!
リナカルなんてどうです?」
「えっ、リナカル?」
思わず吹き出してしまうリリナ。
カイルは得意げに胸を張る。
「リリナ姫様の“リナ”と、カイルの“カル”。
響き、可愛くないですか?」
「……ふふ。可愛いです。
リナカル、気に入りました」
「よっしゃ!」
カイルが拳を差し出し、リリナも笑って拳を重ねる。
「リナカルは不滅です!」
ふたりは声を合わせて笑い合った。
⸻
そのとき――
コートでは第二試合、実質の決勝戦が始まろうとしていた。
エリオン&レヴィアン
VS
レンセリオン&ユリウス
「エリオン様……後衛なんですね」
「姫様の時は前衛でしたもんね」
カイルが頷く。
「この組み合わせ、絶対面白くなりますよ」
⸻
レンセリオンのサーブで試合が始まった。
しなやかなフォームから振り下ろされる一打――
バシッ!
鋭い音が、光盾庭球場に響き渡る。
「殿下、サーブ得意っすからね〜」
カイルの言う通り、最初の一点はあっさりと決まった。
だが――二度目は違った。
エリオンが後衛から滑らかに動き、
その高速サーブを、まるで流れを受け止めるように返す。
ボールはそのまま、レンセリオンのバックハンド側へ鋭く食い込んだ。
「……っ!」
レンセリオンが走る。
ユリウスの頭上を抜ける、絶妙な軌道。
それは――エリオンの、完成された戦略だった。
そして。
その一瞬の揺らぎを逃さず、
レヴィアンが確実に打ち込む。
――ポイント。
「すごい……!」
リリナは思わず胸に手を当て、息を呑んだ。
⸻
だが、レンセリオンたちも――止まらない。
次の瞬間、動きが変わる。
後衛のレンセリオンが一気に攻めへ転じ、
前衛のユリウスが、瞬時に守りへと切り替わった。
その入れ替わりは、あまりにも自然で速い。
「殿下とユリウス様……息ぴったりっすね」
カイルが感心したように笑う。
レンセリオンはチャンスを逃さない。
ユリウスは繊細なタッチで、ギリギリのコースを突く。
攻めと守りが、流れるように入れ替わっていく。
その応酬に、リリナは思わず立ち上がっていた。
⸻
そして――
試合は、最終ポイントへ。
ユリウスがラケットを振り抜く。
強打ではない。
ふわり、と浮かせるような一打。
ボールはやさしく弧を描き、
静かにコートへと落ちていく。
誰も動かない。
――アウトか、インか。
ルークが静かに手を上げた。
「勝者――レンセリオン、ユリウス組」
「うおおおおっ! やりましたね殿下ー!!」
カイルが大歓声を上げる。
リリナは胸に手を当て、ほっと息を吐いた。
夕陽の中で、光るコート。
重なった呼吸と、こぼれる笑顔。
光盾庭球――
それはただの遊びのはずなのに、
そこには確かに、“光”の物語が生まれていた。




