第63話 光の一点、夕陽の庭球場で*挿絵
夕陽が差し込み、影が長く伸びる時間帯。
できる試合数は二つだけ――
そのため、勝ち抜き戦となった。
決まりはシンプル。
最初の二組が戦い、その勝者が残りの一組と当たる。
組み合わせは、練習中の打ち合いの回数で自然と決まった。
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第一試合
リリナ&カイル
対
エリオン&レヴィアン
前衛に進み出たのは、リリナと――エリオン。
(……え、壁……?)
目の前に立つエリオンは、静かな迫力をまとっていた。
広い肩幅が、まるで行く手を遮る“壁”のように見える。
(これ……私でいいの?)
思わずカイルを振り返ると、彼は力強く二度、頷いた。
(……うん、やるしかない)
気を取り直し、前を向く。
その瞬間――エリオンと目が合った。
彼は穏やかに、にこ、と微笑む。
リリナもつられて、頬がゆるんだ。
ラケットを構えた直後――
レヴィアンの初球が放たれる。
鋭い軌道。
思わず見送ってしまいそうになるが、後衛のカイルが軽やかに拾い返す。
序盤は、エリオン&レヴィアンが優勢だった。
エリオンは無駄のない動きで確実に返し、レヴィアンは力強い一打で流れを押し上げる。
隙のない連携だった。
リリナは、なかなか出番がないまま時間が過ぎていく。
(……どうしよう……)
焦りが胸に差しかかった、そのとき――
レヴィアンの返した球が、低い軌道で仕切りを越えてきた。
――今です。
エリオンの眼差しが、そう告げた気がした。
リリナは一瞬だけ、彼の顔を見る。
――でも、迷わない。
全力で踏み込み、ラケットを振り抜いた。
ぱしんっ!
鋭い音が、区画に響く。
球は一直線に走り、境界線ぎりぎりの内側へ――落ちた。
レヴィアンの判断が、一瞬だけ遅れる。
そのわずかな隙が、勝敗を分けた。
審判のルークが、静かに腕を伸ばす。
――得点。
「やった〜!!」
リリナは両手を上げて、ぴょんと跳ねた。
その向こうで、エリオンが嬉しそうに笑っている。
「お見事です、姫様!
今の一打は、百点分の価値があります!」
カイルが叫んだ、その瞬間――
見学していたレンセリオンとユリウスが、同時に吹き出した。
「……百点……!」
ふたりで肩を揺らしながら笑っている。
試合はそのまま、接戦のまま進み――
結果として、エリオン&レヴィアンの勝利となった。
けれど。
リリナの“初得点”は、この日いちばんの拍手を呼んだ。
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『夕陽の前衛』




