表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/382

第43話 静かな夜、君を呼ぶ光

夕食を終え、部屋に戻ったところで、リリナはまっすぐ長椅子へ身を沈めた。


どっと疲れが押し寄せるはずなのに、胸の奥は不思議と軽い。

光の講義を終えた安堵あんどと、小さな達成感が広がっていく。


ゆっくり手を掲げ、てのひらで部屋の灯りをすくうように、そっと指を丸めた――そのときだった。


こつん。


窓辺から、小さく硬い音がした。


「……?」


身体を起こし、そっと窓へ近づく。

もう一度、こつ、と何かが触れる音。


窓掛けを少しだけめくると、外の闇がこちらをのぞき返した。


窓を開け、夜風の匂いを吸い込む。

辺りを見回す――そこで、影が動いた。


光が届く場所へゆっくり出てきたその姿に、リリナは息をんだ。


「レンセリオン様……!」


声が漏れかけた瞬間、レンセリオンは人差し指を唇へ当て、“静かに”と目で告げた。


リリナは慌てて両手で口元を押さえた。


彼は小さく息を整えるように視線を逸らし、ほんの一瞬だけ、迷いを見せた。


その迷いが、かえって胸を締めつける。


そして――


覚悟を決めるように、片手をすっと上げ、

今度ははっきりと、手招きした。


控えめなのに、拒めないほどまっすぐで、

“来てほしい”想いが隠しようもなくにじんでいる。


(誘っている……? 私を……?)


胸の鼓動が早くなる。


こくりとうなずくと、レンセリオンの肩が、ほんのわずか、安堵に揺れた。


リリナは部屋を出ると、早まる心臓をなんとか落ち着かせながら、廊下を静かに駆け抜けた。



来賓館の扉を開け、そっと外へ出た。


入口の暗がりに沈んだ段差に気づく前に、一歩踏み出してしまい――


「きゃっ……!」


そのまま、誰かの胸にぶつかってしまった。


額を押さえて顔を上げると――


「れ、レンセリオン様っ……!」


驚きで声が裏返る。

彼は、とっさに支えるようにつかんでしまっていたリリナの腕から、慌てて手を離した。


「大丈夫ですか? ぶつかってしまいましたね……」


そう言いながら、わずかに視線を逸らし――

ほんの小さく、照れたように笑った。


「こんな形で、すみません。

どうしても……あなたと一緒に見たい景色があったので」


「景色……?」


リリナは額から手を離し、瞬きをした。


レンセリオンはほんの少し呼吸を整え、まっすぐに、迷いなく言った。


「一緒に行ってもらえますか?」


胸が跳ねる。


「……はい」


返事は驚くほど素直にこぼれた。

それを聞いた彼は、ふっと力の抜けたような笑みをこぼした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ