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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第四章 焔国の導き、影に触れる勇気
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第311話 黒鳥の影を追って

レンセリオンは、馬を走らせていた。


頭には、場違いなほど目立つ、つば広帽。


「レンセリオン。日焼けには気をつけてください」


そう言って帽子を押しつけるように手渡し、

自分は王族専用の馬車で優雅に出発した――エリオン。


(……よく言う)


リリナがソレイダへ向かった、という情報を掴んだのと、ほぼ同じ時期。


すでにアクエリシア王国には、

ソレイダから太陽祭への正式な招待状が届いていた。


第二王子であるエリオンは、それを利用して、堂々と王城へ向かえた。


だが――


(俺は違う)


自分は、あくまで“旅の許可を得た身”。


王族として動くには、父王への説明が必要になる。


そうなれば、数日――

下手をすれば、それ以上の足止めを食らう。


その間に、何かが起きたら?


考えるだけで、胸の奥がざらついた。


(……自由で、気楽に見えるものだ)


第二王子。


世間が思い描く“理想の王子様”は、

きっとエリオンのような存在だ。


レンセリオンは、舌打ちをした。


そのとき――


背後から、馬車が風を裂くように迫ってきた。


「……っ」


距離が近い。


馬が驚いて前脚を跳ねさせる。


レンセリオンは手綱を引き、道を譲った。


その瞬間――


反射的に、馬車へ視線を向ける。


「……?」


一瞬、見えた紋章。


翼だけを抽象化した、黒い鳥。


――ナイトクロウ商会。


レンセリオンの目が、わずかに見開かれた。


(……やはり、そうか)


密輸馬車。

あの小瓶。

ルクヴェルで感じた、あの違和感。


ばらばらだった違和感が、ひとつの線になっていく。


ナイトクロウ商会は――

やはり、ソレイダと深く関わっている。


理性は、止まれと告げていた。


それでも――


レンセリオンは、手綱を短く握り込んだ。


(……追う)


“黒鳥”を逃すわけにはいかない。


馬の蹄が、石畳を強く打つ。


レンセリオンは、ナイトクロウ商会の馬車を追って、走り出した。

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