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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第四章 焔国の導き、影に触れる勇気
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第305話 聖炎の温度

聖炎都市ソル=アルテ。

太陽を奉ずる地。

山岳ヴァルカノの麓に広がる高地。

——火と共に在るための場所。


澄んだ空気の中、朝夕には霧が立ち、

火山の赤光が静かに大地を染める。


ここは、燃え盛るための場所ではない。


火と共に在るための――高地だった。


レイヴの父、主祭司サリエルは、

この地の聖炎大神殿に住まい、祈り続けている。


理由はただ一つ。

——大聖火を見守るため。



大聖火の前に、静かな祈りの時間が訪れていた。


燃え盛る炎は荒ぶることなく、

まるで意思を持つかのように、一定の高さを保って揺れている。


サリエルはその前に膝をつき、

古い祈祷文を、低く、穏やかに唱えた。


言葉が尽きた、その瞬間。


大聖火の中心から、

ひとすじの火が――ほどけるように、分かたれた。


それは奪われる炎ではない。

——応じるように、形を変えた光だった。


分けられた火は、

小さな炎壺へと、静かに導かれる。


壺に納まった瞬間、

炎は勢いを失うことなく――


しかし決して燃え広がることもなく、

淡く灯り続けた。


風が吹いても、揺れるだけ。

消える気配はない。


――王宮へ運ばれる火。


人の宴を照らすために選ばれた、

神の残光。


ミラがその炎壺を受け取る。

両手で抱え、慎重に。


その背後で――

レイヴは静かに立っていた。



「……今年も、城へ行くのだな」


不意に、サリエルが口を開いた。


責めるでも、問うでもない。

ただ、事実を確かめる声。


レイヴは一歩進み、深く頭を下げる。


「はい。太陽祭の舞を務めます」


サリエルは返事をせず、炎を見る。


しばしの沈黙。

ただ火の揺らめきだけが、二人の間にあった。


やがて、低く――


「舞は、形ではない」


レイヴは、息を詰める。


「……温度を、忘れるな」


その言葉は、命令ではなかった。

教えでもなく――祈りに近い。


レイヴはもう一度、深く礼をする。


「肝に銘じます、父上」


それ以上、言葉は交わされなかった。


それで、十分だった。

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