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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第四章 焔国の導き、影に触れる勇気
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第297話 笑いの先で、踏み出す火

ふたりは、昨日も腰を下ろした場所――

火の輪から少し離れた、静かな空間に並んで座っていた。


祭りの熱はまだ遠くに残っている。

太鼓の音と笑い声が、ときおり風に乗って届く。


けれど、この場所だけは不思議と落ち着いていた。


レイヴは胡座をかき、

食べ終わった火焼き鳥の串を指先で転がしながら、手遊びをしていた。


高身長の彼が、そんなふうに丸くなっていると、

なぜだか少し小さく見えて――


(……少し、可愛い)


思った瞬間、

リリナは自分で少し驚いた。


けれど、目を逸らすこともできず、

気づけばそのままじっと見つめていた。


その視線に気づいたのか、

レイヴが顔を斜めに傾け、ちらりとこちらを見る。


目が合って、半笑い。


「……俺に、聞きたいことあるって言ってなかった?」


「……あっ」


はっとして、リリナは頷いた。


確かに、聞きたいことはあった。

この国の神獣ヴァルガンの印を持つ人のこと。


けれど――

どう切り出せばいいのか、言葉が見つからない。


黙り込むリリナを見て、

レイヴがくすくすと笑い出した。


「当てようか?」


「え?」


レイヴは、串の先で石の上に数字を書く仕草をした。

けれど石の上だから、文字は残らない。


「……3、3……2……1」


リリナは、その動きを目で追いながら読み上げる。


レイヴは、何度も頷いた。


そして、顔を上げて言う。


「俺の家の場所」


「……え?」


思わず、動揺が声に出た。


「今から……行く?」


あまりにも自然に差し出された誘い。


家に、行く。


その言葉の意味を考えようとして、

リリナは無意識に彼を探るような視線を向けていた。


その様子が可笑しかったのか、

レイヴはふっと笑みを深める。


「……俺が、噛みつきそうに見える?」


そう言って、わざと低い声を作る。


「ガルルル……」


思わず吹き出すリリナ。


レイヴもつられて、声を立てて笑った。


しばらく、ただ笑い合う時間。


祭りの音も、

火の揺れも、

その瞬間だけ遠くなる。


けれど――

笑いが落ち着いた、そのあと。


空気が、少しだけ変わった。


リリナは、胸の奥に残る熱を確かめるように息を吸い、

静かに口を開く。


「……行く」


短い言葉。


それでも、確かに――

一歩、火へ近づいた声だった。


レイヴは、ゆっくりと笑った。


火は、もう灯っている。


あとは――

踏み出すだけだった。


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