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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
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第253話 迷路の庭で出会う影、揺れる眼差し

アクエリシア城へ戻ったリリナとレヴィアンは、

午後の空気がようやく静まりはじめた庭園を、ゆっくりと歩いていた。


城の外とは違い――ここは静かだった。


背の高い低木が連なり、

曲線を描くように幾重にも重なっている。


まるで、迷路のように。


「日除けでしょうか?」


リリナは低木にそっと指先で触れ、振り返る。


レヴィアンは、穏やかに頷いた。


「ええ。夏場は、かなり日差しが強くなりますから」


一拍。


そして、やわらかく続けた。


「リリナ姫……お疲れでは?」


リリナは、小さく首を横に振った。


「朝は少し、気持ちが沈んでいただけで……

身体は元気です」


レヴィアンは、安堵したように息をつく。


「それなら、よろしいのですが」


わずかに表情を引き締める。


「共鳴の旅を急がれるお気持ちは分かります。

ですが――どうか、ご無理はなさらないでください」


昨夜の騒動の疲れだと、彼は思っている。


――もちろん、それもある。


けれど。


胸の奥がざわつく理由は、それだけではない。


リリナは、微笑んでそれを覆い隠した。



「……レヴィアン様は、明後日にはご帰国されるのでしょう?」


「ええ」


レヴィアンは、空を仰ぐように視線を上げた。


「できればレンセリオン殿ともお会いしてから戻りたいのですが……

この様子では、お忙しいのでしょう」


ルクヴェル――


その名が胸をかすめる。


(第三騎士団が、大きな被害を受けたと聞いた……)


(レンセリオン様は……どんなお気持ちで……)


思考が、ゆっくりと沈んでいく。


そのときだった。


ふと――視線を感じた。


上から。


リリナは、ゆっくりと顔を上げる。


バルコニーの上。


そこに、ひとりの人物が立っていた。


――セラフィン。


柵に肘を預け、わずかに身を乗り出すようにして、

こちらを見下ろしている。


その表情には、やわらかな笑み。


リリナは、思わず手を振った。


セラフィンの目元が、静かに和らぐ。


ゆっくりと、手が返された。


レヴィアンもそれに気づき、軽く会釈する。


「……第一王子であられますか?」


「はい。エリオン様のお兄様です」


遠目にも分かる、気品。


光を纏うような存在感。


やさしく、穏やかで――


レヴィアンは、静かにリリナへ視線を戻した。


「……良い兄上のようですね」


リリナは、小さく微笑む。


「ええ……とても」


庭園を渡る風が、静かに吹き抜ける。


三人の距離を、やさしく繋ぐように。

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