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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
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第252話 消えゆく灯り、湖面に揺れる未来の影

本来なら――夕刻まで続くはずだった静水祭。


だが昨夜の混乱を受け、短縮されていた日程はさらに削られ、

二日目の今日は“午前中のみ”で終わることになった。


「もう終わりなの……?」


そんな声が、あちこちから漏れている。



祭の帰り道。


リリナとレヴィアンは、湖畔を歩く親子の声を耳にした。


「灯りを流す催し、ないの……?」

「セレーネ様、寂しがらない?」


母親はしゃがみ込み、子どもの髪を撫でながら、やさしく微笑む。


「大丈夫。あなたの声は、きっと届いてるわ。

セレーネ様は、寂しがったりしないと思うよ」


子どもは、ほっとしたように笑った。



その光景を見つめながら――


リリナの胸にも、静かな灯りがともる。


湖面には、淡い光が揺れている。


けれど――

氷鱗のセレーネの姿は、まだ見えない。


(……どこにいるんだろう)


(まだ、姿を見せてくれない――)



「昨日より……人が減っているようですね」


レヴィアンが、静かに口を開いた。


リリナは、小さく頷く。


「……外へ出るのが怖くなった方も、多いと思います」


影鐘隊の影。

黒月の気配。


昨夜の恐怖は、人々の心に深く刻まれていた。



ふと、リリナは尋ねた。


「テルメナの……バルクレイの印を持つ方。

レヴィアン様は、そのお方をご存じなのですか?」


これからの旅のために――

知っておきたかった。


レヴィアンは、穏やかに微笑む。


「ええ、もちろん存じています。

……その上で、エリオン殿から伺いました」


一拍置いて、


「リリナ姫が“共鳴の旅”を始められたと」


その眼差しには、確かな敬意が宿っていた。


リリナは少し照れながら、続ける。


「でも……これから出会う方たちが、

すぐに同じ方向を向いてくださるとは限りません」


(ヴァエルのように、英雄を目指さない人だっている)


(それでも――)


「……でも、諦めません」


その言葉に、レヴィアンの表情がやわらかく緩んだ。


「テルメナの者は、喜んでついて行きますよ。

あなたのような姫であれば」


リリナの胸に、静かな喜びが広がる。


「……その言葉、とても嬉しいです」


そして、少しだけ身を乗り出した。


「その方と、レヴィアン様は――どのようなご関係なのですか?」


レヴィアンは、わずかに目を伏せる。


どこか懐かしむように。


「信頼している友人のひとりです」


ゆっくりと、言葉を選ぶように続けた。


「長く共に汗を流し、競い、支え合ってきました。

……だからこそ、嬉しかったのです」


一拍。


「最近ようやく、気づけたことなのです」


「最近……ですか?」


リリナが目を丸くすると、レヴィアンは小さく頷いた。


「ええ。ずっと黙っていたようで……

私に遠慮していたのでしょう」


その声は、どこかやさしい。


「長く悩んでいたようですが……

ようやく、自分の名を胸を張って名乗る決心がついたようです」


ふっと、笑みがこぼれる。


「……面白い男ですよ、きっと」


(どんな人なんだろう……)


胸が、ほんの少しだけ高鳴る。


(カイル様のように明るい人?

それとも……まったく違う感じの人……?)


レヴィアンは、丁寧に言葉を添えた。


「テルメナへお越しの際は、ぜひ私のもとへもお立ち寄りください」


リリナは、ぱっと表情を明るくする。


「はい……!必ず伺います!」


ふたりは、静かに微笑み合った。



湖面の光は、ゆっくりと薄れていく。


けれど――


未来へ向かう約束だけは、

胸の奥で、やわらかく灯り続けていた。

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