表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
253/330

第251話 揺らぐ光の中で、三つの影はすれ違う

静水祭二日目。

水光パレードが行われる日。


湖へと続く大通りには、青と白の布がたなびき、

水を模した光の飾りが、朝日を受けてきらめいていた。



ゲスト席。


リリナの隣には、レヴィアンが静かに立っていた。

焦げ茶の髪が、朝の風にやわらかく揺れる。


横目でリリナを見つめ――

その顔色に、わずかに眉を寄せた。


「リリナ姫……やはり、お休みになられた方がよかったのでは?」


抑えきれない心配が、その声に滲む。


リリナは、かすかに笑って首を横に振った。


「大丈夫です……ただの疲れですから」


夜明けとともに祈りの宿を出て、

そのまま式典の準備に追われた。


ほとんど休めていない。


それでも――立っている。


レヴィアンは静かに頷き、話を続けた。


「影鐘隊ですが、城内には侵入しませんでした。

門扉と外壁が遮断したようです」


一拍。


「――影は、物理的な障壁をすり抜けない」


リリナは息を呑む。


(屋内なら安全だと分かっていた……けれど、

城全体を守れるなんて……)


「そんな……一晩で、そこまで……」


「我がテルメナにも、外壁強化を急がせています。

すでに早馬を出しました」


淡々とした口調。


だが、その決断と行動は――誰よりも早い。


(……すごい……)


(レヴィアン様は、本当に“国のために動ける人”……)


その姿を前に――


昨夜、エリオンの胸で泣いた自分が、

胸の奥で静かに疼いた。


(……私は……)


どちらが正しいのか。


姫として、どう在るべきなのか。


答えのない問いが、心の底に沈んでいく。



その時――


澄んだ音が、空気を震わせた。


水のみずすず


パレード開始の合図。


青布を纏った舞い手たちが流れるように進み、

水を象った輿に乗る子どもたちが、笑顔で手を振る。


光と水が揺らめく、美しい行列。


「……綺麗ですね、リリナ姫」


レヴィアンが、穏やかに言った。


リリナも微笑もうとした――その瞬間。


動きが、止まる。


視線の先に――


エリオンがいた。


水光警護隊の先頭。

青銀の外套が朝の光を受け、淡く輝いている。


端正な横顔。


――遠い。


(昨夜、あれほど近くにいたのに……)


胸が、きゅっと縮まる。



レヴィアンは、その変化を見逃さなかった。


横目で、そっとリリナを見る。


その瞳に宿るものを、静かに受け止める。


(……あのふたりは……)


(互いに、閉じるしかなかったのだろう)


誰も、悪くない。


誰も、責められない。


ただ――ほんの少し、胸が痛む。


華やかな光の中で。


レヴィアンの表情だけが、わずかに陰る。



その時。


エリオンが、ふと顔を上げた。


視線が――


リリナと、重なる。


ほんの一瞬。


それだけで、すべてが蘇る。


昨夜の温度。

囁き。

触れた唇。


波のように、押し寄せる。


リリナは、思わず目を伏せた。



レヴィアンは、わずかに目を細める。


その“すれ違い”を、確かに感じ取っていた。


(……気の毒に)


(選べなかったのは――どちらも同じか)



揺らめく光の中で。


三つの想いが、交わることなく――


静かに、すれ違っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ