第250話 素直になれる場所、涙になるほどの温度
リリナは、エリオンからそっと視線をそらし、
再びその胸へ頭を預けた。
「……では、聞きません。
聞きたくない話かもしれないから」
少しだけ意地を張ったような言葉。
言った瞬間、顔が熱くなり――自分で恥ずかしくなる。
エリオンが、くすっと笑った。
「笑わないでください……!
私だって……どうしてこんな気持ちになるのか、分からないんです」
そう言った、そのときだった。
ふわり、と毛布が持ち上がる。
次の瞬間――
リリナの視界いっぱいに、エリオンの顔が近づいた。
毛布の“中”で、目が合う。
息が、止まった。
「……そのまま、見せてください」
囁くような声。
エリオンの指が、そっと顎に触れる。
ゆっくりと、顔が近づいてくる。
――もう、抗えなかった。
リリナは、エリオンの首へ腕を回し、
自ら唇を重ねた。
触れた瞬間、
もっと触れたいと、強く思ってしまう。
一度では、足りなくて。
確かめるように、何度も重ねる。
いけないことだと分かっているのに。
止められない。
――止めたくなかった。
毛布の中で――
ふたりは、静かに触れ合っていた。
⸻
どれくらい時間が過ぎたのか――
もう、分からなかった。
リリナは、エリオンの胸に顔を埋めたまま、
小さく泣いていた。
エリオンは変わらず、
肩に回した腕で、やさしく頭を撫でてくれている。
「……っ、ひぐ……っ」
涙が止まらない。
鼻もぐずぐずで、恥ずかしいのに――それでも。
「エリオン様って……っ……
ずるい人です……」
ぐしゃぐしゃの感情のまま、こぼれた言葉。
言った瞬間、また泣きたくなる。
エリオンは、ほんの少しだけ苦しそうに微笑んだ。
それでも、声は変わらずやさしい。
「……すみません」
否定も、叱責もない。
ただ、受け止めるように抱きしめてくれる。
その温度が、また胸を締めつけて――
涙が、こぼれた。
リリナは泣きながら、小さく笑った。
(……どうして、この人の前だと……)
(こんなにも、素直になってしまうんだろう……)
小さな灯のように寄り添うふたり。
まるで世界から切り離されたような――
静かで、甘い夜だった。




