表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
251/328

第249話 毛布の下で触れた真実、夜の息遣い

ふたりは、同じ毛布に包まれていた。


けれど――

リリナは、とても眠れそうにない。


そっと横を向く。


エリオンのまつげが、静かに伏せられていた。


優しくて。

人懐っこくて。

素直で――

ときどき、子どものように可愛い人。


でもその奥に、静かな強さを秘めている。


(……こんな顔で、眠るんだ……)


胸が、きゅうっと鳴る。


そっと、頭を寄せた。


トクッ……トクッ……トクッ……


規則的な鼓動が、毛布越しに伝わってくる。


その音は、まるで子守唄のようで――

ざわついていた心が、少しずつ静まっていく。


けれど。


(……こんなに優しい人だもん……)


(女性関係だって……きっと……)


胸の奥が、少しだけ痛んだ。


思い浮かぶのは――フェイラ。


知りたい。

でも、知りたくない。


そんな気持ちが、胸の中で揺れていた。



毛布の中で、指先がそっと動く。


エリオンの胸に触れた――その瞬間。


ぱちり、と瞳が開く。

驚いたように、リリナを見た。


けれどリリナは、いたずらっぽく微笑んだ。


その仕草に――


エリオンの腕が、静かに力を帯びる。


リリナの身体を、胸へと引き寄せた。


「ご、ごめんなさい……苦しいです……!」


「……ふふ。すみません」


すぐに力を緩め、やさしく抱き直す。


その温もりに、また心臓が大きく跳ねた。


「眠れないのですか?」


小さく頷く。


すると――


エリオンの手が、肩をゆっくりと撫でた。


あたたかくて。

安心して。

どこか、くすぐったい。


そのまま、ぽつりと声がこぼれる。


「……フェイラ様のことが、気になってます」


ぴたりと――動きが止まった。


次の瞬間。


耳元に、そっと顔が寄せられる。


「フェイラ……?

どうして気になるのです?」


顔を見られない。


リリナは、そのまま胸に額を預けて答えた。


「今日……セラフィン様に言われたんです。

“フェイラに何か言われたのか”って……」


少しだけ、言葉を選ぶ。


「……そんなふうに思わせてしまったのは、

私のせいかもしれません……」


エリオンが、静かに息を呑んだ。


「兄は……他に、何と?」


「女性だと……」


「……ええ。その通りです」


短い沈黙が落ちる。


胸の鼓動が、少しだけ早くなる。


「他にも……ありますか?

私が知らないこと」


リリナは、ゆっくり顔を上げた。


視線が、重なる。


「……私に話したくないことが、あるんですよね?」


揺れる瞳。


「だから、祈りの小径で……

フェイラ様から隠れるようにしていたんですか……?」


エリオンは、静かに首を振った。


「……違います。それは誤解です」


一拍。


「フェイラを避けたのは事実ですが――

リリナ姫様に、話したくないことはありません」


リリナは、息をのむ。


エリオンは少しだけ視線を落とし、続けた。


「僕は……自分のことを話すのが、あまり得意ではなくて」


かすかに、苦笑が混じる。


「兄にもよく言われます。

“お前は何を考えているのか分からない”と」


その言葉に、リリナの胸が静かに揺れた。


「……もし、私が知りたいと言ったら」


そっと問いかける。


「エリオン様は……困りますか?」


少しの沈黙。


そして――


「……少しだけ、困ります」


正直な答えだった。


けれど。


「でも――話せないわけではありません。

ただ……話しにくいだけです」


その言葉が、やわらかく心に触れる。


ふたりは、そっと視線を絡ませた。


夜の静けさの中で。


触れ合う温度だけが――

ゆっくりと、距離を近づけていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ