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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
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第244話 夕闇を駆ける盾、迫る影の中で

一方その頃――エリオン。


祈りの小径へと続く道を、

鋭い眼差しで見渡しながら駆けていた。


前方――

子を連れた家族が、ゆったりと談笑していた。


落ち着いた装い。

この国の民だと、一目で分かる。


エリオンの姿に気づいた夫の視線が、

その手に握られた刀へと走った。


ただならぬ気配を察し、

咄嗟に妻と子を庇うように引き寄せる。


「殿下……!」


エリオンは足を止めることなく、わずかに速度を落とした。


「この時間帯、外出禁止令が出ています。

“祈りの宿”へ急いでください」


「外出禁止令……?

い、祈りの宿とは……」


戸惑いの滲む声。


だが――


「……孤児の修道院よ。あそこなら……!」


妻が息を呑んだように言う。


次の瞬間、子を抱き上げ、走り出した。


「何がどうなってるんだ……!」


夫もなお困惑しながら、その後を追う。


エリオンは、その背へ声を投げた。


「人を見かけたら、“逃げろ”と伝えてください!

知らせるだけでも、救える命があります!」


「分かりました!!」


振り返らずに返る声。


家族は、そのまま駆けていった。


エリオンは一瞬だけ足を緩め、

祈りの小径へ視線を走らせた。


(……見逃せない)


胸の奥で膨らむ焦りを、ひとつ息で押し沈める。


そして――再び、駆ける。



ふと。


対岸――

反対側を走るリリナの姿が、視界に入る。


小さな体で、必死に走りながら、

人影に懸命に声をかけている。


(……なんて、強い方なんだ……)


胸の奥が、熱を帯びる。


そのとき。


リリナが振り返った。


――その表情が、曇る。


(まさか……)


エリオンも、同じ方向へ視線を向けた。


そして――


息が止まる。


黒い煙のような影が、

湖面すれすれを這うように広がっていた。


(急がないと……!)


全身に力を込める。


地を蹴る足が、さらに速くなる。


先ほどの家族が、叫びながら走っている。


その声に導かれるように、

散っていた人々が、“祈りの宿”へと向かい始めていた。


(……繋がっている……)


小さな連鎖が、確実に命を運んでいる。


最後尾の男に追いつく。


「お、王子……様っ!?」


振り向いた男の目が、大きく見開かれる。


「振り返らずに走ってください!」


強く言い切る。


だが――


男は、思わず振り返ってしまった。


そして。


「う、うわあああ!!」


闇を見た瞬間、悲鳴が弾ける。


その恐怖に突き動かされるように、

男は必死の力で駆け出した。


やがて――雑木林へ入る。


その先に、“祈りの宿”へ続く道が見えた。


そして。


前方――


老婆を背負って走る夫婦。

そのすぐ後ろに、懸命に駆けるリリナの姿。


エリオンは、大きく息を吐いた。


(……良かった。間に合った……)


胸の奥に広がる安堵が、

わずかに震えていた。

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