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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
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第241話 迫り来る夕闇、駆けるふたり

ティアラの部屋に戻ったリリナは、

今日一日、胸の奥に残り続けているざわめきを消せず、ただ窓辺に立ち尽くしていた。


静水祭の初日。

こんな気持ちになるなんて――


「……?」


ふと、違和感に気づく。


昨日は、まだこの時間――

もっと空が高く、光に満ちていたはずだ。


けれど今日は――


光が、静かに沈んでいく。


(……日没……早い……)


胸騒ぎが走る。


視線を落とした、そのとき。


祈りの小径に、人影が見えた。


(……このままでは……!)


祈りの小径は、この国の習わし。

日没の前後には、多くの人が訪れる。


だが今は――

黒月の影が、すぐそこまで迫っていた。


「……行かなきゃ」


考えるより先に、体が動く。


リリナは窓辺を離れ、部屋を飛び出していた。


(王様は……まだ“外出禁止”を出していない……!

時間が……足りない……!)



回廊の角を曲がった、その瞬間――


視界に、並んで歩くエリオンとレヴィアンの姿が飛び込んだ。


そのまま駆け抜けようとしたとき。


「リリナ姫様!」


エリオンが動く。


次の瞬間、伸びた腕に引き寄せられ、

その胸にぶつかるようにして、行く手を塞がれた。


「は、離してくださいっ!」


リリナはもがく。

だが、エリオンの腕もまた強く――必死だった。


「どうしたのですか? どこへ向かおうと……!」


「祈りの小径ですっ!

日没が始まります……まだ人が……!」


その言葉に、エリオンの表情が変わる。


「そんなはずは――……」


言いかけて、息を呑んだ。


廊下に差し込む光が、急速に色を失っていく。


「……っ」


一瞬で理解する。


「レヴィアン殿は、ここに」


「了解しました」


レヴィアンは静かに一歩下がり、道を譲る。


その瞬間――


ふたりは同時に駆け出していた。



回廊の途中。


壁に飾られた、交差した二本の刀。


エリオンは迷いなく、その一振りを引き抜く。


シャッ――


鋭い音が、空気を裂いた。


「えっ……!」


初めて見る、エリオンの“戦う顔”。


その緊張に、リリナは思わず息を呑む。


――次の瞬間。


自分の手もまた、もう一振りを掴んでいた。


金属の重み。


冷たい感触。


音に気づき、エリオンが振り返る。


「リリナ姫様! あなたは僕が守ります。

刀を持つ必要は――!」


「今は……守られることじゃなくて。

“私にできること”をしたいんですっ!」


言葉が、強く出た。


その理由に――自分でも気づいていた。


(……フェイラ様みたいに……)


胸の奥に、あの姿がよぎる。


リリナは、エリオンの横をすり抜けた。


風を切り、長い髪が揺れる。


一瞬、エリオンは目を見開く。


だがすぐに――その表情は、柔らかくほどけた。


「……あなたは本当に……」


その言葉の続きを、飲み込む。


そして、彼もまた走り出す。


ふたりの足音が、回廊に響く。


迫り来る影へ。

祈りの小径へ。

人を守るために。


――ふたりは、並んで駆けた。

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