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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
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第220話 下山の報せ、揺れる息づかい

翌日の昼頃。

エリオンが、アクエリシア調査団を率いて下山してきた。


――けれど。


その顔色は、重かった。


「ひとり……影鐘隊に消されました。」


静かな言葉が、胸に落ちる。


「……そう、ですか。」


リリナは息を詰め、エリオンの表情を見つめた。


「ルクヴェル第三騎士団イグレアは……被害が多数にのぼっています。」


淡く揺れる声。

その奥に、押し殺した感情が滲んでいた。


リリナは唇を結び、そっと言葉を継ぐ。


「……でも。

アンダーヴェイルに迷い込んだ人たちは……

腕の立つ者ほど……“別の地へ回された”と、聞いています。

その他の方は、補給工場区へ……」


短い沈黙。


そして――


「昨晩は……大丈夫でしたか?」


勇気を振り絞るように問う。


その瞬間、エリオンの表情がふっと和らいだ。


「ええ。小屋にいましたよ。……ただ」


わずかに笑みが混じる。


「……環境が整っておらず、少々騒ぎになりまして。」


「え……?」


エリオンは少しだけ言葉を選ぶように間を置き、

控えめに、手元で小さく仕草を添えた。


「……その、簡易的なものでして」


リリナの頬が一気に赤くなる。


(……まさか……)


エリオンは肩を揺らしながら続けた。


「カイル殿が――

“影鐘隊に消されても構いません!

俺は先にアンダーヴェイルで待ってます!

……殿下に、そうお伝えを!!”

……と、飛び出そうとしたので、止めました。」


声真似まで完璧だった。


リリナは、堪えきれず吹き出す。


「だめ……笑っちゃ……!」


思わずエリオンの胸元を軽く押す。


エリオンは目を細め、柔らかく笑った。


その距離が近くて――

リリナは、はっとして視線を逸らす。


エリオンは、その横顔を静かに見つめていた。



「明日、アクエリシアへ向かいましょう。」


穏やかな声。


「影鐘隊の出現範囲は……戻ってみないと分かりませんが。

二日後には、レヴィアン殿も到着されます。」


「え! テルメナのレヴィアン様ですか!?」


ぱっと表情が明るくなる。


「静水祭をご覧になる予定です。」


「お別れして、まだそんなに経っていないのに……

なんだか、とても懐かしいです。」


「……色々ありましたからね。」


エリオンは静かに頷いた。


「……荷造りは終わりましたか?」


「一応は……でも、つい詰め込みすぎてしまって……」


少し困ったように笑う。


エリオンも、くすっと笑った。


「身一つでも大丈夫ですよ。必要なものは現地で揃います。

……僕が、すべて用意できますから。」


あまりに自然で――


思わず、くすっと笑ってしまう。


「もう……エリオン様ってば」


ふたりは顔を見合わせ、笑った。


その場に、やわらかな空気が広がる。


――アクエリシアへ向かう前日。


水面のように、静かな時間が流れていた。

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