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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
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第219話 旅立ちの支度、揺れる心音

部屋に戻ったリリナは、静かに旅の支度を進めていた。


本来なら——

次にここを離れるのは、

ルクヴェルで行われる婚約式のはずだった。


それが今は、

世界を救う旅へと変わっている。


あの頃の自分は、想像すらしていなかった。



両親にはすべてを話し、

日没後の外出を禁じる警報が、国全体へと発令された。


これで少しでも、影鐘隊に消され、

アンダーヴェイルへ迷い込む民が減るはずだ。


あとは——レンセリオン様が王都へ戻り、報告し、

その情報が、世界中へ広がれば。


けれど。


夜が長くなるほど、ルミナリエの民の生活は制限されていく。

それはきっと、新たな問題も生む。


……それでも。


(まずは、人命……)


リリナは、そっと胸に触れた。


(私の印が完成するまで……この世界は、持つ……?)


あと六つ。

自分の覚醒を含めて、七つの魂。

時間は——かかるだろう。


(どんな人たちなんだろう……)


残る“印持ち”たち。


王族の印は、自分とレンセリオン様、そしてエリオン様。

それ以外は、民の中にいる。


どうやって出会うのか。

どうやって「世界を救う」なんて話を——伝えるのか。


それでも。


(……信じたい)


未来を。



足元で、ルナがリュックをくんくんと嗅いでいた。


「ふふ……何か気になる匂いがするの?」


しゃがんで抱き上げると、

ルナは嬉しそうに喉を鳴らし、腕の中に収まる。


「ルナ……また、しばらくお別れだよ」


ぺろ、と舌が伸びる。


「だめ、顔は……っ」


避けても、すぐ追いかけてくる。

小さな攻防戦のあと——

リリナは、もう一度ぎゅっと抱きしめた。



「ごめんね、ルナ。本当は……連れて行きたいのに」


腕に、自然と力がこもる。


「でもね……旅の先で、ルナのこと“美味しそう”って言った人がいるの」


少しだけ、苦笑が混じる。


「だから……連れていけないの」


つぶらな瞳が、じっと見上げてくる。


胸が、きゅっと締めつけられた。


「ルナが、いつものように過ごせなくなるのは……嫌なの。

お散歩も、できなくなっちゃうでしょ?」


静かに、言い聞かせるように。


「そんなの、ルナも嫌だよね」


「だから私……強くなる」


言葉が、少しだけ震える。


けれど——


「仲間と繋がって、悪いものを終わらせて……」


一拍。


「必ず、帰ってくるから」


「それまで……待っててね、ルナ」


ぎゅうっと抱きしめる。


ルナは、小さく「きゅん」と鳴いた。


それはまるで——

「いってらっしゃい」と、言ってくれている気がした。

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