表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/115

第22話 光と水、交わる剣

騎士団本部内。

レンセリオンの後ろを、リリナたち4人がついて歩く。


その途中、先ほど駆けつけた騎士――

筋肉質でありながら柔らかい印象を持つカイルが、小走りに近づいてきた。


「こちらを。通行許可証のブレスレットです」


差し出されたのは細い金属の輪。

手首にはめると、微かに淡い光が走った。


「帰る時に返してくださいね。

許可証なしで内部へ侵入すると――尋問になりますので」


「尋問……!」


三人とも顔を青ざめさせながら、素直に腕にはめた。

やはり警備は厳しい。



練兵場に着くと、

レンセリオンは武器棚から一本の剣を迷いなく選び、中央へ進んだ。


練兵場の柵の手前で、

長身の騎士ルークが静かに進路を塞ぐ。


「ここから先は、エリオン殿のみです」


「……エリオン様だけ、ですか?」


自然とリリナは隣のエリオンを見上げた。

その瞳には心配の色が宿っている。


エリオンは安心させるように微笑み、剣を一本取るとレンセリオンのもとへ歩いた。



練兵場の中央で――

二人の王子が向かい合う。


「珍しく、感情的になっていますね」


穏やかな声。

エリオンは、いつものように落ち着いていた。


「……俺を、試すつもりか」


「考えすぎでは?」


その微笑みは柔らかいのに、どこか鋭い。

レンセリオンの眉がわずかに動いた。


「あの塀は三メートルはある。

なぜ、そんな場所へ彼女を上げた」


声は冷静だった。

だが、その奥にわずかな揺れがあった。



柵の外では、リリナたちが見守っている。


「何を話しているのかしら……全然聞こえませんわね」


アルメアは風の流れを探るように目を閉じる。


「聞こえますか?」

リリナが尋ねると、アルメアはため息をつきながら答える。


「ええ。男のプライドですわ」


「ぷ、ぷらいど……?」


首を傾げるリリナ。

隣のレヴィアンは項垂れていた。


「……エリオン殿が、私の代わりに罰せられているのでしょうか……」


「エリオン様とレンセリオン様は、ご友人です」とリリナが言うと、

レヴィアンは驚いた表情のまま固まり、

それからゆっくりとリリナを見た。


リリナは優しく頷いてみせた。



中央では、空気が張り詰めていた。


「最悪の事態も想定した上で、安全に執行しました」

エリオンの声は静かだった。


「その保証はなかった」


「それだけですか?

……塀の上から、何が見えました?」


エリオンの口元がわずかに緩む。


レンセリオンの表情が、一瞬だけ引きつった。


そして――

乱れを断つように深く息を吸い、構え直す。


エリオンも同じように構えた。


「問題をすり替えるな。

俺は――お前の判断が正しかったのかを問うている」


金属が擦れる鋭い音。

次の瞬間、二人の剣がぶつかった。


レンセリオンの一撃は鋭く、真っ直ぐ。

対するエリオンの受けはしなやかで、力強い。


光と水――二つの属性が交わるように、呼吸がぶつかる。


交錯したのは、ほんの数合。

剣の残響が響いた瞬間――


エリオンが低く問いを落とす。


「その正義で、本心を覆い隠すつもりですか。

……他にも、何を隠しているのです?」


レンセリオンの肩がわずかに強張る。

目の奥に影が揺れた。


「……知らなくていい」


震えを押し殺すような短い一言。


エリオンはその気配を感じ取り、胸の奥で何かが引っかかった。


(……やはり変だ)


リリナにだけ見せる反応。

叔父のライゼルによる異例の出迎え。

感情の揺れ。


(これは……ただの保護ではない。

“言えない理由”が存在する)


静かに剣を下げると、エリオンは言った。


「……では、ここまでにしましょう」


レンセリオンも刃を伏せ、張り詰めた気配がほどけていった。


遠くで見守っていたレヴィアンが小さく息を吐く。

アルメアも胸に手を当てた。


リリナは二人を見つめながら、

胸の奥に、

小さな光の波紋のようなざわめきが、

まだ消えずに残っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ