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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
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第208話 黒月の下に生きる者

黒月を見上げたまま、リリナの瞳が震えた。


(……これが“養分”……?)


(こんなの……どうやって止めるの……)


どれだけ見つめても、それは光ではない。


影。


重く、冷たく――

世界を押し潰すように、空に浮かんでいる。


「お前の世界で影鐘隊が動き出したのも、黒月の影響だ。」


ヴァエルの声が、淡々と落ちてくる。


(じゃあ……私の世界の月も……)


(少しずつ……変わっていた……?)


気づかなかった。


当たり前すぎて、見上げることさえ少なかったから。


「……日没が、早くなっていたんです。

夜も……長くなってきていて……」


ぽつりと漏らす。


「……日没?」


ヴァエルはわずかに眉を動かす。


一拍。


「ここでは、常に黒月が上がっている。」


「……え……?」


言葉が追いつかない。


「ずっと……夜、なの……?」


「――これが日常だ。」


当たり前のように言われるからこそ、重かった。


(……夜明けがない)


(だから森も……土地も……死んでしまった……)


すべてが、繋がる。


そのとき。


ふと、アウルの言葉が蘇った。


――一巡だけ。


「……時間……あるの……?」


震える声で問う。


「ある。」


ヴァエルは黒月を見上げたまま、答える。


「“初影しょえい”、

 “深影しんえい”、

 “返影へんえい”、

 “眠影みんえい”。

 それが、この世界の一日だ。」


「へ、へぇ……」


思わず苦笑が漏れる。


「……意味、全然わからない……」


まったく別の世界の“時間”だった。


「今は?」


そう問うと、


ヴァエルは、わずかに黒月へ視線を向けて――


「……そろそろ、初影だ。」


リリナも空を見上げる。


けれど――違いが分からない。


返影の鐘のときに見た黒月と、今の黒月。


何も変わらないように見える。


(でも……)


(夜が長くなるほど……力が強まっている……?)


喉が、ひゅっと鳴る。


「……私の世界にも……黒胎が……?」


口にした瞬間、その言葉が現実へと落ちた。


(もし……そうなら――)


(セレフィアが……ルミナリエが……)


胸が、強く締めつけられる。


「……さぁな。」


ヴァエルの声は、静かだった。


リリナは、両手で口を覆う。


(どうしよう……)


(私の世界が……もう、蝕まれていたとしたら……)


黒月の下で脈打つ黒胎の姿が、離れない。


まるで――世界の心臓そのもののように。

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