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黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
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第205話 赤い印の意味、影の翼が呼ばれる夜

リリナは、ゆっくりと世界地図へ歩み寄った。


近くで、確かめたかった。


一枚の大陸。

国境の線はなく、巨大なひとつの領域として描かれている。


(この×……ここが“何か”なの……?)


その印に、自然と視線が引き寄せられる。


「その意味が分かるのか?」


――耳元。


低い声が、突然落ちた。


「ひゃっ……!」


反射的に振り返る。


すぐ真後ろに、ヴァエルが立っていた。


壁と彼に挟まれた、逃げ場のない距離。


「あなた……足音は……?」


「……見に行くか?」


「え……?」


一瞬、言葉を失う。


視線が絡む。


試すような目と、探るような目。


リリナは小さく――けれど確かに、頷いた。


その瞬間。


ヴァエルは、大窓を開いた。


冷たい夜風が流れ込み、

ふたりの髪を静かに揺らす。


短く、口笛が鳴る。


その瞬間――


足元の影が、ゆらりと揺れた。


黒い羽が、夜気の中へ舞い上がる。


影が形を取り、輪郭を成し――


漆黒の巨大鴉が、窓の外にふわりと現れた。


(……影から……?)


(ペットって……こうやって呼ぶの……?)


呆然と見つめる。


気づけば、手にしていた瓶を傾けていた。


最後の一口を、無意識に飲み干す。


ヴァエルが、迷いのない動きでリリナの手を引いた。


「あ――」


指から瓶が離れ、床へと転がる。


軽い音。


中身が空でよかったと、胸を撫で下ろす。


そのとき。


ヴァエルが瓶へ視線を落とし、わずかに口元を上げた。


「全部飲んだのか。」


一拍。


「……ヴァルゼアの背で吐くなよ。」


巨大鴉――ヴァルゼアが、ゆったりと翼を広げる。


どこか誇らしげに。


ヴァエルは迷いなく、その背へ飛び乗った。


リリナは一瞬ためらう。


だが――


胸の奥から湧き上がる。


「知りたい」という衝動。


それに背を押されるように。


そっと手を伸ばした。


影の翼へと――。

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