表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
206/339

第204話 器の影、揺れる距離

器が二人もいる――。


(私だけじゃ、なかった……?)


リリナの瞳が揺れる。

胸の奥が、ざわりと震えた。


(私たちの関係って……何……?

どうしてここで巡り会ったの……?)


答えは見えないまま、謎だけが深まっていく。


そのとき――


ヴァエルの手が、そっと伸びた。


放心するリリナの胸元へ。


破れた布を、静かに整えるように――

印を覆う。


それ以上、触れることはなかった。


リリナはゆっくりと身を起こし、

破れた襟元をぎゅっと掴む。


少し離れた場所では、ヴァエルがいつの間にか別の上衣へ着替えていた。


ちらりと目を向ける。


二の腕には、黒い紋様が刻まれていた。

絡み合う線が、影を写し取ったように皮膚の上へ広がっている。


耳たぶには、埋め込まれるような黒い鉱石。

装飾にしては、どこか異様だった。


(……この人……身体に刻んでる……?)


(それとも……この世界では、普通なの……?)


思わず見つめてしまう。


視線に気づいたヴァエルが、ふっと顔を上げた。


目が合う。


リリナは慌てて視線を逸らした。


(の、覗き見なんて……!

でも……気になる……)


小さく息を整え、意を決して口を開く。


「わ、私たちは……仲間なんですか?

それとも……敵ですか?」


その瞬間――


パサッ。


布が飛んできて、顔に落ちた。


「……え?」


手に取る。


上衣だった。


「ありがとう……ございます。」


荒いと思えば――急に優しい。


その落差に、心が揺れる。


リリナはそれを羽織った。


ヴァエルは棚から瓶を二つ取り出し、

テーブルの角で軽く打ちつけて蓋を外す。


そのうちの一つを、無言で差し出した。


受け取る。


ひんやりとした感触が、手に心地いい。


思わず、ほっと息がこぼれる。


「へぇ。そんな顔もするのか。」


ヴァエルは瓶を傾けながら、わずかに口角を上げる。


リリナは照れ隠しのように一口飲んだ。


瞬間――


喉から胸へ、一気に熱が走る。


「けほっ……!」


むせる。


ヴァエルの肩が、わずかに揺れた。


「……酒だ。」


淡々とした説明。


そのまま、天井から垂れた紐を引く。


ざぁっ。


カーテンが上がり、大きなベッドが現れた。


一瞬、息が止まる。


ヴァエルはその端に腰を下ろし、

瓶を手にリリナを見つめる。


その視線と、閉じられた空間。

逃げ場のない距離に、胸がざわつく。


――近い。


それだけで、呼吸が浅くなる。


リリナは落ち着かず、また瓶に口をつけた。


だがやはり、むせた。


「ふっ……。」


小さな笑い声。


「さっきの問いだが……」


リリナは姿勢を正し、息を呑む。


ヴァエルはゆっくりと言った。


「味方ではない。」


胸が、きゅっと締めつけられる。


「だが――敵かと問われれば、YESともNOとも言える。」


瓶を飲み干し、床へ静かに置く。


(どういう意味……?)


(この人……何を考えてるの……?)


「敵は他にいます!」


リリナは、はっきりと言い切った。


アウルが告げた存在。


影を蝕み、光を呑み込もうとする――

本来あるべきでないもの。


それこそが、本当の敵。


ヴァエルは視線を横へ逸らす。


壁にかかった地図へ。


リリナもそれを追った。


アンダーヴェイル全土の地図。


赤い「×」。


そこに突き立てられた、短剣。


まるで――


何かを封じるように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ