表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎光の継承―七つの魂と選ばれた少女―  作者: りこ。
第三章 水鏡の奥、影の真相
204/331

第202話 影の王座、告げられる“返影の理”

ヴァエルは、まるで玉座のような大きな椅子に腰掛け、足を組んでリリナを迎えた。


息を切らしている自分とは対照的に、彼は微動だにせず、呼吸ひとつ乱れていない。


リリナは乱れた呼吸を整えながら、そっとあたりを見回した。


壁には地図が貼られている。

アンダーヴェイルのものだろうか。


その一角に、赤い印がつけられ、短剣が突き立てられていた。


(……何これ……)


思わず意識が引き寄せられかける。


だが、すぐに視線をヴァエルへ戻した。


――見られている。


じっと。


逃げ場のない視線。


無表情のまま、何も語らないその目に、言葉が喉で止まる。


「……お前、どこから来た?」


唐突な問い。


リリナは一瞬、息を呑んだ。


(この人は……どこまで知ってるの……?)


迷いながらも、口を開く。


「……オーヴァーヴェイル。」


アウルが呼んだ、自分の世界の名。


通じるとは思っていなかった。


だが――


ヴァエルは驚きもせず、ただ静かに頷いた。


「ルミナリエから来たという人間に、ここ最近出会う。

同じ場所なのか?」


深く椅子に身を預け、わずかに息を吐く。


(ルミナリエ……?

出会うって……他にも……?)


胸が強く跳ねる。


その動揺を見透かすように、ヴァエルは続けた。


「影鐘隊に、お前も追われていただろう。」


影鐘隊――あの黒装束。


リリナの背筋が強張る。


「影を奪われた者は、“初影”まで牢獄に送られる。」


「……え……?」


思考が一瞬、止まる。


(牢獄……?)


(じゃあ……あの人たちは……)


黒装束に触れられ、消えた人々。


――死んだのではなく。


「……生きて……る……?」


声が、かすれる。


リリナの瞬きが増える。


(命を奪われたんじゃない……)


(この世界に……来ただけ……?)


胸の奥が、大きく揺れた。


足から力が抜け、その場に座り込む。


「……良かった……」


ぽつりと漏れる。


「生きてたんだ……」


涙が溢れた。


その瞬間――


「泣くな。」


冷たい声。


リリナははっとして顔を上げる。


「ご、ごめんなさい……でも……勝手に……」


慌てて涙を拭う。


ヴァエルは変わらず、無表情のまま。


その前で、リリナは静かに口を開いた。


「でも……罪もない人を牢に入れるなんて……」


震える声。


「影鐘隊って……何なんですか……?」


ヴァエルは淡々と答えた。


「影の巡視兵だ。」


「巡視……?」


「返影の鐘が鳴る前に帰れ。」


低く、短い言葉。


「鐘が三度鳴れば――“影が歩く”。」


空気が、わずかに冷える。


「返影戒と呼ぶ者もいる。」


返影戒――。


聞き慣れない言葉が、重く胸に落ちる。


ヴァエルは続けた。


「お前たちが知らないだけだ。」


一拍。


「ここでそれを無視する者は……酔っ払いと、俺たちだけだ。」


(……俺たち?)


リリナは周囲を見渡す。


だが――


館の中は静まり返り、誰の気配もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ