表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちっぱいメイドは玉の輿&寿退社の夢を見れるか!?~伯爵家の下っ端メイドですが ハニトラしてこいと命令されました~  作者: 岩爺


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/36

王国歴1669年10月22日②:コンチキショーーーーーーッ!!!

 朝食を終えた私達は馬車を使わずにゲッスーナ邸を目指した。時間もまだ早く、馬車で向かえばコーモノ様の朝食に重なりそうだったからだ。それに朝食を御代わりしたのでお腹が膨れ、腹ごなしをするのも目的の一つである。


「そういえば嬢ちゃん、カリーナやビビィ嬢とは長いのか?」

「ビビィ先輩は、私がメイドになった時から可愛がってもらってました。と言うよりビビィ先輩は誰にでも優しくしてましたね。あの柔らかい性格ですから、誰からも好かれてましたよ。…えっと、カリーナさんの事は……あまり知らないんです…」


 グララブの問いに私は言葉を濁した。私が知っているのはこの2日間の話した感触と、コーモノ様の妾という噂だけなのだ。噂を伝えてよいのか私では判断できない。

 グララブは私の苦悩を見抜いたのか、私の頭を撫でてくれた。


「嬢ちゃんは優しいのぉ…妾の話はカリーナ本人が最初に話しておるわ。確か7日程前、ふらりとガストロミに現れて『伯爵の愛人ですがハニトラにきました』と挨拶しおった。アレには儂等も魂消(たまげ)たわぃ!」

「そ、それは確かに強烈ですね…」

「じゃろ!?これまでのハニトラは街角でぶつかるか、何度か店屋でかち合うか、裏道で暴漢に襲われとるかじゃ!それを正面切って宣言したんじゃから面白くての!儂等も変に勘繰らずに済むし、気風(きっぷ)が良いからキースとも気が合ったんじゃ!」


 私の初対面を思い出し、その雰囲気は何となく想像できた。確かに裏表なく話した方がみんなには受け入れられると思う。


「先日は飲まんかったが、あれで中々良い酒を飲む女でな…飲んで笑って涙して、愚痴を溢して抱きついて、女の強さも弱さも持ち合わせておった。あれでもう10歳も年を経ていたら、儂が持ち帰ったぐらいじゃわい」


 グララブは下卑た笑いを浮かべたが、その表情を消すと溜息を吐いた。


「ここでは言わんが、あれで苦労した女だ…男を信じたくても信じられん、それでも男を信じたい…まるでキースを鏡に映したようじゃ…何だかんだと本質的な所で似通っとるのかのぅ…」

「そうなんですか…」


 私はカリーナもキースも遊び人だと思っていたが、それは私が2人の表面しか見ていなかったのだろう。『飽きられた愛人』なんて自分を卑下する気持ちは分からないが、もしかしたらカリーナは将来に希望を見出せていないからかも知れない。


 私の将来は希望だらけだ。今は何も諦める気は無い。しかし、もし、その時が来れば、私はカリーナを理解できるようになるのだろうか。今の私には全然想像できないが、それでも私は希望に縋り付きたいと思う。


「…信じちゃ駄目なんですかね?」

「その問いは、嬢ちゃんが手痛い裏切りを経験してからでないと口には出せんな。理想論は心に届かんぞ?」

「それを言われると…何も言えないです……」


 グララブの言いたい事は分かるのだが、それでも心の奥がモヤモヤとする。答えを求めた訳ではないのだが、ついヒイロの顔を見上げてしまった。ヒイロは私の視線に気付くと、何だか困ったような顔をして微笑む。


「俺からは何も言えないかな?俺は信じる以前に、想いを口に出せない…拒絶されるのは苦しいからね」

「まったく…赤ん坊だって転びながら歩く練習をするんじゃ!そのままではキスも出来んぞ!?」


 ヒイロはグララブの言葉に顔を赤くしたが、何故か横目で私の方を見た。不思議と私の顔も赤くなった。


「わ、私ですか!?……結婚してくれたら……やぶさかでもないですけど……」

「ほほ!!キスだけで結婚じゃったら、交合するには城でも用意せねばならんの!!」

「もう!グララブさんは意地悪です!!」


 私の照れ隠しにグララブが笑い、ヒイロも釣られて笑う。


 結局、私の中にカリーナを説得する案は浮かんでこなかった。しかし昨日一人で悩んでいた時より少しだけ頑張れる気がする。それはグララブに丸投げするとか、多勢に無勢で説得するとかの方法じゃない。私は”話をする事”が大切だと気付いたのだ。

 カリーナの話を聞く、そして真剣に向き合う。それが問題解決の一番の方法だと思えた。




 ゲッスーナ邸を訪問した私達に、出迎えたコーモノ様はとても驚いていた。なにせ期待していなかったメイドが『天井知らず』の2人を連れてきたのだから当然だろう。

 応接室まで通されたが、途中の廊下も室内も埃が目立つようになっていた。どうやら先輩達が本気で仕事の手を抜いているらしい。それに気付かないコーモノ様も大概だと思う。


 応接室で待っていると、戻ってきたコーモノ様が汗を拭きつつ弁明し始めた。


「あ~…カリーナは体調不良でして……今は部屋で臥せっておりますです、はい」

「え!?カリーナさん、熱でも出たんですか?」

「ふん、それが昨日の昼に帰って以来、部屋から出てこんのだ…あの金食い虫が…」

「……それで、カリーナさんに会う事はできないのですか?」

「いえ、そんな…扉越しには話す事はできるのです…ただ『出たくない』と…」

「どうしましょう…強行突破ですかね?グララブさん、扉の鍵を開けられます?」

「応接室の扉と同じなら、5つ数える内に開けられるわぃ…おっと…こ、コマイお姉ちゃん、時たま怖い事を口にするよね?」


 私とグララブのやり取りを不思議そうに見ていたコーモノ様が私に手招きする。私はソファから立って歩み寄ると、コーモノ様が私の耳元で聞いてきた。


「コマイ君、やけに親しいではないか?」

「ふふふ、それはもう…もんのすごく親しいですよ?」

「そうか…やはり私の目に狂いはなかったか!君ならやってくれると信じてたよ!」

「そうでしょう!私の美貌を持ってすれば、ハニトラなんて御茶の子さいさいなのです!」

「よし!それで?グララブ氏とはどこまで行った?」

「……は?」

「は?ではないだろう…私は体型が似通っておるから、グララブ氏へのハニトラとしてコマイ君を選んだんだ。他の誰が相手をするものか!」

「な・ん・で・すってぇ~~~~~~~!!!」


 私はコーモノから飛び退くと、腰に手を当てて胸を張った。


「この魅惑のボデェの、どこが幼児体型ですってぇ!?」

「み、魅惑!?それはカリーナみたいなボッキュンバンな体型を言うのだ!顔が可愛いからカリーナの代わりと期待して雇ってみれば、これっぽっちも成長せんではないか!」

「キャーーーーーー!!ヤダーーーーーー!!!そんな目で私を見てたんですか!?」

「ふん、見る場所も触る場所もないではないか…」

「言ったなコンチキショーーーーーーッ!!!」


 私がコーモノに殴りかかろうとした時、背後からヒョイっと持ち上げられてしまった。後ろを見ればヒイロが私を軽々と持ち上げていた。


「コマイさん、暴力はいけないよ?」

「だってコノヤロウが私の身体を幼児体型だって!!」

「こ、コマイさんは魅力的だよ…それは俺が………ほ、保証するよ…」

「え?………あ、あ、ありがとう…ございます…」


 真っ赤な顔で援護してくれるヒイロに、私の顔も真っ赤になった。

その様子を見たコーモノが口をパクパクさせる。


「ちなみに僕もコマイお姉ちゃんの事は好きだよ?あとシーナルも色々あって、コマイお姉ちゃんには感謝してると思う。今じゃ立派な友達だよね♪そんな訳でゲッスーナ伯爵様……今晩の食事代も期待してるからね!」

「は、はいぃッ!」


 その後もグララブとコーモノの交渉は続き、今晩は45Gを受け取る事となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ