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第3話


 そんなある日だった。


『今度、王宮で国中の貴族の子供たちと交流するためにお茶会をしようと思う』


 そういった内容の手紙がイリーナの手元に届いた。しかし、それは「招待状」ではなくいつもと同じ手紙。


 ただ今までと違うのは「他愛もない内容」ではなく「お茶会をしようと思う」といった明確な内容が書かれているという点。


「?」


 最初こそ「なんで私にわざわざ言うのだろう?」とイリーナは考えた。


 そもそも、王族がお茶会や夜会を開くのはよくある話。ただ「それをわざわざ自分に伝えて来た」という事にイリーナは違和感を覚えた。


 ――これじゃあまるで「開こうと思うけどどう思う?」って私に聞いているみたいね。


 イリーナとしては「お好きにどうぞ」と言いたいところだが、きっとキュリオス王子としては何か思うところがあるのだろう。


 ――でも、正直そろそろか……って思ってもいるのよね。


 キュリオス王子とイリーナは同い年。


 このくらいの年齢になると、貴族の子供の中では既に婚約者がいるという場合もある年だ。


 ――多分。今回のお茶会は殿下の婚約者探しも兼ねているのでしょうね。


 いや、むしろそれが目的だろう。


「……」


 なんて悠長な事を考えているイリーナもそういった貴族の子供の一人なのだが……。今はあえて考えない。


 ――ただ、もしこのお茶会で婚約者が決まったとしたら……。


 きっとこうして簡単に文通のやり取りをする事は出来なくなるだろう。


 ――親同士で決めるにせよ、自分の意志で決めるにせよ、私と殿下の関係はあくまで「文通をする仲」というだけ……。


 そんな事を考えてふと頭を過るのは「親に今までキュリオス王子とやり取りをした手紙を見せてキュリオス王子と文通をする仲」という事を言ってしまうというモノ。


 ――そうだ。今までやり取りしていた手紙は全部取ってあるのだから……筆跡で信じてくれるはず。


 そして、権力……つまり王族と繋がりを持ちたいと思っている両親はきっとイリーナを婚約者に勧めるはずだ。


 ――それに、私は公爵家の令嬢だし……。


 それでいて「文通をしていた」という時点でそれなりに仲が良いという事の証明にもなる。


 ――そうなれば……。


 きっとキュリオス王子と婚約する事は出来るはずだ。


 少なくとも、他の令嬢たちよりは多分一歩リードしていると言っても過言ではないはずである。


 ――こんな手紙を送って来るくらいだもの。きっと殿下自身も思うところがあるのよ。


 もし、これが婚約者を選ぶためのもので、キュリオス王子がそれを望んでいないのであれば……きっと文通仲間のイリーナが一番婚約者としてチャンスが……。


「……止めよう」


 ――多分。殿下は本当にただの交流を目的をしたお茶会をしたいだけだから……。


 実際のところ。このお茶会をキュリオス王子自ら考えて開こうとしている可能性も否定は出来ない。


 それに、そういった事を考えそうな人でもある。


 そこで「それはとても素晴らしい考えだと思います。もし開催されるのであればぜひ参加させていただきます」と返事を書いた。


「……よし」


 ――危なかった。ちょっとだけ……邪な考えが過っちゃった。


 しかし、実はイリーナ自身も分かっていた。


 それはただの自分に言い訳しているだけに過ぎなくて、本当は「キュリオス王子に惹かれている」という事に。


 そして、傷つきたくないからこそ自分に言い訳をしているという事に……。

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