第2話
そんな状況の中。もし仮にイリーナが「キュリオス王子と文通をする仲だ」と言ったとしても……。
――多分信じてはくれないでしょうね。
まぁ、イリーナとしてはそちらの方が都合が良いのだが。
ただ、もし仮に……仮に信じたとしても、イリーナの望んでいる様な事にはならず、きっといい様に使われて終わるだけだろう。
「はぁ」
正直、ここまで来てしまうと、もはや淡い期待すら抱かなくなってしまうのだから悲しいモノだ。
しかし、そうなってしまったのも今まで都合の良い時にしか構わなかった両親の自業自得なのだから特に思う事はない。
――たとえ「悲しみ」でも「妬み」や「嫉妬」でも、感情を持つって……疲れるわよね。
なんて思いながら小さくため息をついていると、赤茶色の髪をしたメイドが「どうされましたか?」と声をかけてきた。
「……」
――正直、全然慣れないわね。音も立てずに現れられると。
分かりやすく「驚き」のリアクションをした訳ではないが、それでもイリーナはその場で固まった。
このメイドは元々イリーナが生まれた時からいた訳ではない。どちらかというと、ルイスを養子にする際。両親が使用人を増やした時に来た一人だった。
だからイリーナは彼女が元々何をしていたのか知らない。
ただ、気配する感じ取らせないその独特な立ち振る舞いに、イリーナは彼女『フィーユ』を自分の専属メイドにした。
「?」
そんな事を考えているなんて知らないフィーユは不思議そうな顔でイリーナを見つめる。
――ああ! 尋ねたのに私が何も言わないから不思議に思っているのね。
実はフィーユはたまにこうして不思議そうな顔をする事があった。
それは大抵、イリーナが何もリアクションしなかった時なのだが、イリーナ自身あまり人と関わる事がなかったため、フィーユのリアクションはむしろ新鮮だった。
要するに二人共「不器用」という事になるのだが……。
「――別に何でもないわ。ただ……また手紙を出したいと思ったのよ」
「あの方に……ですか」
「ええ。これを」
「かしこまりました」
フィーユの言う「あの方」というのはキュリオス王子の事である。
なぜわざわざこんな言い方をしているのか……それは「両親に知られないため」である。
――まぁ、両親だけではないのだけど。
とりあえず何事も予防をしておいて損はないだろう。
フィーユも最初こそ困惑していたが、イリーナの両親がイリーナに対する態度を見て察したらしい。
――そういったところはなかなか察する力のがあるみたい。
ただ、まだまだメイドとして新米なところもあるのだが、なんだかんだイリーナは彼女を気に入っていた。




