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第1話


 そこから「仲良くなってお茶会をする程の仲に……」なんて事にはならず、イリーナとキュリオス王子はあの一件以降「文通」をする仲になっていた。


「……よし」


 王族と公爵家の令嬢ならば家柄としては申し分ないはずだ。しかし、まだ子供とは言え「男女」という事に違いはない。


 昔からの顔なじみであればそこまで問題にはならないかも知れないが、いらぬ誤解を生まないためにもある程度の線引きは必要な事である。


 ――運が良いのか悪いのか私と殿下の関係はごく一部の人しか知られていないし。


 多分、この間の様にお茶会で会ったとしても、キュリオス王子は特別な反応はしないだろう。それはイリーナも同じだ。


 しかし、二人の手紙の内容は他愛もない話ばかりで、ちょっとした日常の事しか書いていない。


 ――王族故に色々としがらみも多いだろうけど。


 キュリオス王子はそういった事を手紙に書く事はなかった。それならばイリーナもそうすべきだろうと彼に合わせた。


 ――別に愚痴を聞いて欲しいワケでもないし。ましてや噂話や世間話をしたいわけでもない。


 ただ単純に「友達」が欲しかっただけだ。


 ――これが「普通」かどうかは分からないけどね。


 しかし、少なからずイリーナの孤独な心は和らいだ。それは間違いではない。


 ――でも、何度か国王陛下や王妃様に会っていたとしても、王子と仲良くなるのは難しそうね。


 ましてや「婚約関係ではない男女」である。


 お互い「ただの友達」と言っていたとしても、周囲は良い顔をしないだろう。それこそ二人でお茶会、ましてや外出なんて話になればどんな噂が立つか分かったモノじゃない。


 たとえ本人たちにその気持ちがなかったとしても、周囲がそう感じてしまった時点で噂はたつものなのだ。


 ――そんな面倒事はお断りね。それに……。


 正直今、クローズ家は私に構っている暇はない。


 なぜなら現在、クローズ家には養子として『ルイス』という男の子を親戚筋から引き取って来たのだ。


 おおよそ両親は将来的に彼を家の跡継ぎにしたいのだろう。


 ――子供は私しかいないから。


 基本的に、家を継ぐ事が出来るのは男子のみ。そうなれば、イリーナが誰か婿養子をもらってくるか、血筋の家から養子をもらうしかない。


 そして、イリーナの両親は「養子をもらってくる」という選択をした。


 ――よくある話だわ。


 そう、これは何もイリーナに限った話ではなく、貴族社会では良くある話だ。しかし、両親はそんな彼につきっきりでイリーナの事は眼中にない。


 ――元々私に興味なんてなかっただろうけど……。


 ここ最近は今までもそんなに多くなかった外出もめっきりなくなり、その代わりルイスを連れて回る様になっていた。

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