第3話
――今……。
完全に目が合っていた様な気が……する。しかし、すぐに逸らされてしまったけれど……。
――それにしても、王族……か。
今までは何度か国王陛下と王妃様には会っていた。しかし、実はイリーナと年の近い王子たちとは一度も会った事がなかった。
――とりあえず王子が二人いて、年が近い。しかし、二人の雰囲気は二人とも全然違って……性格は少し難ありだとか。
もっとも、これらのほとんどがお茶会で聞き耳を立てたり両親と話している大人たちの話を聞いたものばかりだったが。
彼は……その二人のどっちだろうか。
「!」
――こっちに来る!
そう思い、イリーナは物陰に隠れようと動いた瞬間。
「――何をしているの?」
「え……と。その」
――しまった。お、遅かった。
今の状況で見つかるという事は「立ち聞きしていました」と言っているのと変わらない。
「あ、もしかして。見てた?」
「……」
そもそも「立ち聞き」自体あまり良い行為ではない事くらいイリーナも良く分かっている。
――でも、下手に嘘をついて後でバレた時の方がもっと怖いから……。
それならば先に言っておいた方が良いだろう。それに、イリーナ自身そんなに嘘が上手いワケでもない。さて、どうしたモノか。
「そっか。君は……クローズ公爵家の」
「イリーナ・クローズと申します。殿下」
そう言ってマナー講習で学んだ通りにお辞儀をする。
「……」
「どうされましたか?」
――な、何か間違えたかな?
あまりに無言のまま動かない王子に一抹の不安を覚えていると……。
「あ、ああいや。随分と洗練されている…というか。僕に気づいて話しかけてきた同じ年くらいの子たちの誰よりもキレイだったから」
「あ、ありがとうございます」
多分。お世辞だとは思う。それでも、今までこうして面と向かって褒められた事がなかったのでイリーナは素直に喜び……というより、照れた。
――だって、今まで褒めてくれてもそれは「親の教育が……」とかで私自身に言ってくれる人なんて……いなかったから。
しかも、その褒めてくれた人たちはみんなどこか「打算的」な目をしていた。
「ところで、僕はまだ君に自己紹介をしていないのだけど『殿下』と言ったという事は……やっぱり聞いていたんだね?」
――あ。
「も、申し訳ありません」
「いいよ。下手な言い訳はせず考えて謝罪する。随分と素直な反応だ」
素直と言えば確かにそうかも知れない。ただ、イリーナにはそれを比べる相手がいない為良く分からない。
「じゃあ、改めて。僕の名前は『キュリオス・エリオット』この国の第二王子だよ」
そう言ってキュリオス王子はニコッと笑った。
しかし……なぜかイリーナにはその笑顔が「心から笑っている」という風に見えなかった。そしてこれが『キュリオス王子』との出会いであった。




