第2話
「……」
そんな事を考えていると、今度は顔を真っ青にしている。
――今度は一体どうしたのかしら?
もちろん、イリーナにはどうして彼女が突然顔を真っ青にさせ始めたのか分からない。
「あなた……大丈夫? 顔が真っ青よ?」
そう言ってアリアを見ると、口では「だ、大丈夫です」と言いつつもまだ顔が青い。
――体調不良……かしら?
今は放課後で日も落ち始めている。日中の温度差を考えれば体調を崩してしまうのも理解出来る。
「それよりあの……」
「? 何かしら?」
「ど、どうしてリチャード殿下とご婚約されたのですか?」
「……」
突然のアリアの問いにイリーナは思わず驚いた。でも、それは今までみんな気になっていながら誰にも聞かれたからである。
――ただ、聞かれたところで……。
「公爵家の令嬢として当然の流れだったから……かしら」
こう答えるしかない。
「王家に嫁がれる事が……ですか?」
――あの事件は……そう簡単に話せる事じゃないから。
だからイリーナはその事を伏せて「ええ」と頷く。
「それは私が公爵家で生まれた時からの定め……だから」
「……」
ただ、アリアはあまり納得していないのか無言だ。
正直無言ではあるが「キュリオス王子と婚約を結びたかったのではないだろうか」と言いたそうだ。
――クールな子だと思っていたけど、結構顔に出る子ね。
こうして話してみると、意外に分かりやすいの事が分かった。
「――気にしないで。さっきも言ったと思うけど、私は彼が楽しそうに笑っているのを見られるだけで良いと思っているのよ。それに、私自身が決めて納得しているのだから」
「……」
だから……なのか、どうにも落ち着きがない。
「それに、リチャード様の新たな一面などを知る事が出来て良かったと思っているの。何せ婚約するまで彼との面識はほとんどなかったから」
「そうだったんですね」
「ええ。ちょっと聞いた事があるのはリチャード王子は勉強の時などいつもどこかにすぐ行ってしまい、家庭教師や使用人たちも手を焼くほど脱走の名人だったって事くらいかしら?」
「……」
そう言うと、アリアはなぜか難しそうな顔をしていた。
――何か思うところでもあるのかしら?
でも、それを聞いたところで教えてくれるとは限らない。そうであれば、わざわざ聞かなくても良いだろう。
――それにしても……あの頃は本当に優しかった。
「本当に……不器用ながらに優しくて……リチャード様が先に学校に通う様になってからもリチャード様は私と会ってくれた。そして私も今年から学校に通う様になって今まで以上に会いやすくなると思っていたの」
そう、入学するちょっと前まではそれを内心期待していた。でも、今となってはその見る影もない。
そんな事を考えていると、だんだんと苛立ちの気持ちが沸き上がってきて……イリーナはここで一旦言葉を区切り、小さく「はぁ」と息を吐いて「それなのに……」と言ってグッと強く自分の手を握った。
「ここ最近は、何かにつけて忙しいって断られてしまって……正直」
――辛い。
声には出さなかったものの、自分の顔が暗くなっているのが分かった様な気がした。




