第2話
「……」
そんな事があった数日後……。
イリーナの姿は学校内にある『購買』にあった。
「いらっしゃい。今日はどういったご用件で――。おやおや? これはまた珍しいお客様だぁ」
声をかけられ振り返ると、そこには何とも特徴的な紫の髪をした猫目のキュリオス王子より頭一個分ほど小さくかわいらしい少年の様な男性がいた。
イリーナがこの購買を利用するのはこれで二度目。店員の反応を見るに、どうやら生徒はもっと頻繁にここを利用している様だ。
――でも、わざわざここを利用しなくても備品くらいなら自分で用意出来るもの。
基本的にここで売られている物は学校外でも購入する事が出来る。なので余程急いで買わないといけない用事がない限りここに来る必要自体ないのだ。
――ただ『杖』だけはここで買ったけど。
でもそれはこの学校に通っている人は一部の「ぶっとんだ才能を持った人」を除いた全員が通る道らしい。
「今日はどういったご用でしょうか?」
「……いえ、あの時は少し急いでいたからもう少しゆっくり見ようと思っただけよ」
口ではそう言いつつ、実はここに来たのは明確な「理由」があった。
――あのクッキー。
そう、実は「ソフィリア」という一つ先輩に当たる女子生徒にぶつかられた時に渡されそうになった『チョコレートクッキー』に変なひっかりを覚えたイリーナはあのクッキーが購入出来るお店を探していたのだ。
しかし、学校の外で買えるお店ではそもそも『チョコレートクッキー』そのものが存在しなかった。
もちろん「自分で作った」という可能性も考えられたが、どうにも違う様に感じた。
そして、最終的に「基本的に何でも揃う」と言われているこの購買で探してみる事にしたのである。
「そうですか」
「……」
ニコッと笑って「それではごゆっくり」と声をかけると、そのまま奥へと姿を消した。
そうして店内をゆっくりと物色していると……本当にこの狭い店内には様々な物が売られている事に気が付く。
――杖に筆記用具に……コレは……何かしら?
学校生活に必需品とも言える物から日常品。そして「何に使うのかすら分からない物」まで様々。そんな中に……。
「!」
――コレだ。
お目当ての『チョコレートクッキー』がお店の隅っこ。それも分かりづらく様々な商品で隠れるように置かれていた。
「――これが気になりますか?」
「っ!」
――い、いつの間に。
ついさっき奥に行ったと思っていたが、いつの間に戻って来たらしく、そっとイリーナに声をかけた。
「こ、これはどういった商品なのかしら?」
「そうですね――」
店員がこの『チョコレートクッキー』について説明しようとしたところで突然購買の扉が大きな音をたてて開かれ、そこにはなぜか怒りの表情でイリーナを見るリチャード王子の姿があった。




