第2話
「随分と……」
「ん?」
「随分と仲良くなられたなと思いまして」
「?」
そう言いつつ向ける視線の先にいるのは男爵令嬢の彼女。
「ああ、うん。そうだね。仲良くは……なった……のかな?」
「――なんです? その煮え切らない回答は。お二人の仲に関しては国王陛下や王妃様もお認めになっていると聞いていますが」
「まぁ、うん。そうなんだけどね。まだまだ警戒されていると言うか……仲良くはなったと思うけど、どことなくまだ距離があると言う感じかな」
「……」
苦笑いで言っているキュリオス王子はどことなく寂しそうだ。しかし、それに関してはイリーナとしても「仕方ない」と思ってしまう。
何せ、自分は「男爵家の令嬢」という立場で相手は「王家」だ。どうしても気を遣ってしまうのだろう。
――どうにもあの子は……殿下と「友人」という関係になっても、変わらない様だしね。
人によっては……いや、貴族で多くの人は階級に関わらず王家の人と「友人」という関係になった場合。自慢したり人を下に見る様になったりする。
しかし、どうやら彼女。アリアはどうにも違う様だ。
「そういえば、今日は兄さんとお茶会だと聞いていたけど――」
そう言いつつ、キュリオス王子は「もう帰るのかい?」と言いたそうな表情を見せる。
「ええ、帰ります。お茶会も終わりましたし」
「もうかい? ついさっき来た様なものでは? いつもは庭園とか散歩していただろう?」
――いつも……ね。
実は、リチャード王子が魔法学校に入学する前。お茶会に招かれた時はほぼ決まって王宮内の庭園を散歩していた。
キュリオス王子はそれを言っているのだろう。
しかし、いつもキュリオス王子がその様子を見ている訳ではない。ここ最近は本当に対面してお茶を飲んで少しだけ話したらその場で解散という形になっていた。
「何か……あったのかい?」
「……」
言ってしまっても良いのだろうか。心配そうな顔で自分を見ているキュリオス王子に甘えてもいいのだろうか。
アリアとは「友人」という形で今は収まっており、キュリオス王子に婚約者はいない。しかし、将来的にはアリアと……という噂もある王子に話しても。
そもそも、こんなところを誰かに見られて下手な噂でも立てられたら……。
――殿下の為にもならないわね。
「いえ。特には何も」
一瞬芽生えた「甘え」を振り切るようにイリーナは笑顔を作り「それよりも――」とアリアの方に視線を向ける。
「そろそろ戻られた方が宜しいのでは? あまり席を外しては彼女も不思議がりますよ?」
そう言うと、キュリオス王子は「あ、ああ。そうだな」とどこか納得していない様子で彼女の元へと戻って行った。
「……」
そして一人その場に残されたイリーナも「ふぅ」と小さくため息をつき、すぐに帰りを待つフィーユの元へと急いだのだった。




