第1話
こうしてあっという間に時は過ぎ……イリーナは無事試験を突破し魔法学校に入学する事になった。
その間もたまに……本当にたまにリチャード王子とはお茶会や会う機会はあったものの、以前と比べるとその回数は減り、時間は短くなっていた。
「?」
そしてその日はそんなもはや「珍しい」とさえ言えるリチャード王子とのお茶会を終えた後の事だった。
――何かしら?
ふと大量の書物が保管されているもはや「図書室」とも言える書斎では楽しそうな声が聞こえ、そこには楽しそうな笑顔を浮かべるキュリオス王子と、その笑顔に気づかず勉強をしている貴族令嬢の姿があった。
「……」
――良かった。たのしそう。
それが二人を見た時の感想だった。
正直、二人が一緒にいるのを見るのはこの時が初めてで、もし見る時が来たら、自分はどんな反応をすればいいのか分からなかった。
ひょっとしたら嫉妬するかも知れない。
そんな事を思ってすらいたのだが、意外にイリーナの内心は穏やかで、どちらかと言うと、母親の様な心情だった。
――同い年のはずなんだけど。
でも、二人の様子。特にキュリオス王子を見ていると……そんな風に感じる。
別に「幼い」とかそういう事じゃない。だた単純に……普段の彼を見た上でそう感じたのだ。
「ふふ」
――と、お邪魔をしちゃいけないわね。
チラッと見ただけではあったが、二人共人の気配に敏感で、その敏感さが魔法の力の高さを示しているのだという事を知っている。
だからこそ、早くこの場を去ろうと足早に歩いていたのだけど……。
「……え」
「こんにちは」
出口にいるはずのフィーユと合流するために歩いていたはずなのに、イリーナの前に現れたのはさっきまで書斎にいたはずのキュリオス王子だった。
「え、あ。こ、こんにちは」
相手の方から挨拶をされたのにこちらから挨拶を返さないのは失礼だ。
そんな事は分かり切っているので一応挨拶はする。しかし、イリーナの頭の中はパニックになっていた。
外から見ていると比較的冷静に返せている様に見えたかも知れない。
しかし、当のキュリオス王子は驚いてパニックになっているイリーナに気が付いているのか口元に手を当てて笑いを堪えていた。
「……笑わないでくださる? 誰でも突然目の前にさっきまで別の部屋にいたはずの人が現れれば驚きます」
「フフフ。確かに、ごめんごめん。驚かせてしまって。しかし、随分穏やかな顔で覗かれていたのでつい……気になってしまって」
「……」
それに関しては事実だ。だから何も言わなかった。ちょっとだけ「のぞき見をした」という事でバツが悪かったから少し睨んでしまったけれど。




