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悪役令嬢にそんな『力』はありません!  作者: 黒い猫
第九章 王子である事にて
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第1話


「……そう」


 何となく「そうではないか」と思っていた。そんな嫌な予感は今日。リチャード王子と会ってから雰囲気で何となく感じていた。


 ――結局。私の目を見て話してくれたのってどれだけだったのかしら?


「そして、殿下と初恋と思われる人物は生徒会のメンバーらしく、いつも一緒にいる様です」


 しかも、相当仲睦まじい様子だと言う。


 ――いつも一緒で仲睦まじい……ね。


 思い返してみると、リチャード王子の隣にいる時はいつも何か行事や来客がある時だけ。それ以外の普段。二人で一緒にいる事はほとんどなかった様に思う。


 そして、今日の様子を見ていると……やはりリチャード王子の心が離れて行っているのがよく分かる。


 ――お茶会はあるけど、二人で外出なんてどれくらいあったかしら?


 もちろん「生徒会の仕事の関係で」と言われてしまったらそれまでだろう。しかし、どうにもフィーユの話を聞く限りそうではなさそうだ。


「随分と仲が良いみたいね」


 なんて言いつつ心のどこかでは「いや、そんなはずは……」なんて思っていて、こうしてフィーユから報告を受けた今でも内心はそう思っている。


 ――こういう時。すぐに怒る事が出来れば……。


 きっと楽なのだろう。しかし、今もどこか迷ってしまっているイリーナにとっては「怒る」という事も出来ない。


「お嬢様」

「……ごめんなさい。少し、心の整理をさせてちょうだい」


 簡単に言うと、今のイリーナの心情は「グチャグチャ」だ。


 頭では「初恋の人と再会して浮ついているのが今のリチャード王子」と分かっている。


 それでも心のどこかで「そんな事はない」と思ってしまっているのは……やっぱりお茶会などで話をしていて言われたリチャード王子の優しい言葉が残ってしまっているから。


 ――随分とほだされていたのね。私も。


 それらはきっと「婚約者だから」という上辺からくるもの。頭では分かっていたはずなのに。


 婚約者になったばかりの頃は仮に「初恋の人と再会したら」と怯えていて、最近はその言葉に慣れて「大丈夫」と思っていた事に。


「でも、話は分かったわ。ありがとう」

「……何もされないのですか。公爵家の力があれば二人を引き離す事など造作も」


 ――何も……ね。


 今のリチャード王子の視線は明らかに初恋の人の方に向いているのだろう。


「そう……かしら? そんな事をすればむしろ二人の仲が深まる可能性が高いと思うのだけど」

「そ、それは……そうですが」


 障害があればあるほど「恋」というのは盛り上がる。なんて、どこかの物語で見た事がある。それに、下手をすればこちらが悪者になってしまう。


 今の二人が周囲からどういった目で見られているかは分からないが、少なくともリチャード王子がそれを気にしているかは分からない。


 ――もし気にしなくなったら終わりね。


 それに厄介なのはリチャード王子が「王子」である事だ。


 仮にもし、リチャード王子が自分の権力を使われてしまうのが一番困る。なぜならイリーナにはそれに対抗出来るだけのカードがないからである。


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