第3話
そんな中、キュリオス王子はあの『アリア・ウォーレン』とさらに仲良くなり、出かけた先で事件に巻き込まれた。
もちろん。そんな事が起きれば当然国王陛下や王妃様の耳にも入り、彼女の存在は王家の知るところとなった。
――思えば、あれで私の心は吹っ切れたのよね。
元々彼女の魔法の力が自分とは段違いである事は知っていた。それに加えて「才能」もあるとくれば、イリーナが彼女に勝てるのはせいぜい『身分』くらいだ。
しかし、実は国王陛下はどちらかと言うと昔からの「身分制度」を変えようと尽力している人物でもある。
そんな人が魔法の力も才能もある彼女を悪く思う事はないと分かっていた。
そして、イリーナ自身もたまに王宮で見かけるキュリオス王子の姿を見ていた。ただ、当のアリアは「目立ちたくない」と思っているらしいが。
――でも、いつかは少なからず目を付けられていたんじゃないしら?
どのタイミングになったかは分からないが、そう思う。
イリーナとしては「羨ましい」と思う気持ちがなかったワケではなかったが、アリアが自分の立場を重々理解していた事は分かっていたので特に妬みや嫉妬を抱く事はなかった。
むしろ、突然王家との関りが出来て困惑しているであろう彼女に同情すらしていたくらいである。
――そこから私も自分の「今」に向き合う様になったのよね。
ただ、リチャード王子と婚約してからというもの。以前はほとんどなかったお茶会の誘いや今まで散々「悪役令嬢」と言っていた令嬢たちが「そんな事ありましたか?」と言わんばかりに笑顔を振りまいて来た。
――あそこまでいったらむしろ恐怖ね。
言った本人たちは当の昔の事で都合よく忘れているのかも知れないが、こういった事を言われた本人はよーく覚えているモノ。
ただ、リチャード王子の今後の付き合いの事などを考えると無下にする事も出来ず、そもそもどうして良いのか分からずとりあえず適当に対応している。
――それが悪かったのかしら?
しかし、それと学校に入学した事を差し引いてもリチャード王子がイリーナと会う回数がかなり減っているのは事実だ。
「失礼致します」
そんな事を考えていると、頼み事をしたフィーユが戻って来た。
「――随分と、早かったのね」
むしろ一日もかからず分かるとは。
「そう……ですね。ひとまず簡単なご報告を」
「ありがとう。それで……どうだったのかしら」
そう尋ねると、フィーユは小さく息を吐く。
「お嬢様の懸念されていた通りです。調べた結果、どうやら今年の入学者の中にリチャード殿下の初恋の方だと思われる方がいらっしゃいました」
――こういう時。言葉を濁す事なくキッチリと言ってくれるのはありがたいわね。
実はたまにこういった場面で主人の事を思うあまり口ごもってしまう使用人はいる。
フィーユからしてみれば「それが仕事ですから」と言われてしまえばそれまでだが、今のイリーナにとってはこのフィーユのハッキリとした報告がむしろありがたかった。




