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第2話


 王宮に着くなり父は国王陛下に呼ばれて行き、イリーナは王宮内にある温室へと案内された。


 ――まぁ。よっぽどの事がない限り決まりでしょうからね。


 一応念のためにイリーナとリチャード王子の意見は聞いてくれるだろうが、それはあくまで「念のため」であり、それこそよっぽどの事がない限りほぼ決まっている婚約の話がなくなる事はないだろう。


 ――だからこそ、このお茶会に意味があるのかって話よね。


 正直な事を言うと、ほぼ決まっているのであれば、もう親同士で決めてくれてもいいとすら思っている。


 ――むしろ、今までそうしていたのに……ああ、でも。殿下の方はそうじゃないかも知れないわね。


 そう、あくまで「親の決めた事は絶対」というのはイリーナに限った話であって、王家側はそうではない可能性はある。


 現に、リチャード王子はワガママ……というより、自分の意見はハッキリ言うタイプらしく、なかなかに頑固だと聞いている。それを踏まえて考えると……その可能性は高そうだ。


「……」


 ――大丈夫……よね?


 貴族の母親は基本的に家督である父親を支える……というのが「理想」とされている。あくまで「理想」ではあるのだが。


 ――私の両親みたいな人たちも少なからずいるし。何もかもが理想通りとはいかないわよね。


 高い理想は時として足枷になる事もある。だからこそ、イリーナは過度な期待はしないでおこうと考えた。


「――すまない。待たせた」

「いえ、リチャード殿下。私はクローズ公爵の娘。イリーナ・クローズです」


 そうこうしている内にリチャード王子が現れ、イリーナはすぐに王子に挨拶をした。


「リチャード・エリオットだ。こうして話すのは初めてだな」

「はい。そうですね」


 目の前に現れた少年の瞳は赤く、髪は黒。正直、見た目だけで言えばキュリオス王子と対照的に見えた。


「弟とは……随分と親しいらしいけどな」

「……そうでしょうか」


 そんな会話をしつつリチャード王子に促されてテーブルに対面で座る。ただ、この話には少しドキッとした。


 イリーナ個人としてはキュリオス王子と手紙のやり取りをしていた事は言っていない。しかし、今のリチャード王子の言い方は……何かを知っているかの様に聞こえる。


「別に隠す程の事でもないけどな。そもそも公爵家の令嬢。手紙のやり取りをするのに身分としては申し分ないだろ」

「……」


 イリーナとしては「手紙のやり取りをするのに『身分』は関係あるのかしら?」と一瞬思ったが、きっと関係あるのだろう。


 ――やっぱり、王家は大変なのね。


 そう思いつつイリーナの脳裏を過ったのは……リチャード王子の思い人の事だった。

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