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第1話


 ただそれはゲームの本筋を知っている人間にとっては大きなズレで、大変な事なのだが、当のイリーナにとっては全然問題のない話。


 そもそも、転生者は「この世界はゲームの中の世界」という認識だったかも知れないが、イリーナにとっては「この世界こそが自分の生きている世界」に他ならないのである。


 そして、その『認識の違い』こそが将来的に転生者たちの未来も大きく変える事になるワケなのだが……それはまだ先の話――。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆


 ――相変わらず、素晴らしいところね。


 この日。イリーナは初めてリチャード王子とお茶会をする事になっていた。


「……」


 今回のお茶会で大きな問題がなければ、正式に婚約をする手はずになっているらしく、お茶会にはお父様が付いて来ていた。


 ――お父様は本当に私に興味がないから……。小言すらないからお母様より幾分か気持ちが楽なのよね。


 その点で言うと、前回のお茶会よりもリラックス出来ていた。


 ――それに……相手がキュリオス殿下じゃないっていうのも……少しはあるかも知れないわね。


 かなり失礼な事を思っている自覚はあるが、口に出さなければいいだけの話だ。


 ――キュリオス殿下の興味はもうあの子に移っているみたいだし。リチャード殿下の件もどうやら会ったのはたった一回だけだったみたいみたいだし。


 これはフィーユから仕入れた情報で、どうやらリチャード王子の思い人である少女はその一度きり会えていない……との事。


 ――どうやら相手は王宮に荷物を卸していた卸業の子供だったみたいだけど……まぁ、理由はどうであれ、これで懸念材料はなくなったわね。


 リチャード王子が「もう二度と会えない」と傷心しているところにこの婚約話。卑怯だと言われても仕方ないかも知れないが、利用出来る価値はある。


 ――それに……私も傷心中みたいなモノだもの。もしかしたら気が合うかも知れないわね。


 自分からそれを言うつもりはない上に、図らずとも状況的にはリチャード王子と似た様な状態。


 王子が弱っているところをつけこむ様なマネをしてしまうのは気が引けるけど、キュリオス王子の邪魔をしたいワケでもない。


 将来的に自分は王族。もしくは身分の高い家に嫁がなければいけない身。


 それならば、出来るだけ彼の近くにいたいと願っても良いのではないだろうか……そう思ってしまうのだ。


「――着きました」


 馬車の運転手の言葉を聞き、先に下りたお父様に手を引かれて馬車を下り、王宮へと向かったのだった。

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