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悪役令嬢にそんな『力』はありません!  作者: 黒い猫
第六章 婚約話にて
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第1話


 ――早い……わね。


 そう思ったのは事実で。何せイリーナはキュリオス王子と文通する仲にはなったものの、王宮までは呼ばれていない。


 ただ「王宮に呼ばれる事」が大事なのかと聞かれると、そうとも言えないのだが。


 それに、どちらかというと今回は以前のお茶会で見た『現象』について本人から聞きたい」という目的がある。


 少なからず彼女自身に興味はあるのは分かっているものの、それが好意かどうかまではまだ分からない。


 手紙に関しても、王宮からお茶会の招待状を出している時点で連絡を取るのは比較的簡単だったはずだ。


 ――多分。手紙が来た時は相当驚いたでしょうけど。


 それくらい男爵家と王家では立場が違う。それを踏まえて考えると、まだイリーナの方が距離感的には近いかも知れない。


 ――立場……という意味ではね。


 そう思いつつ手紙の最後の方には「僕としては『友達』になりたいって言ったんだけど、やんわりと断られちゃったよ」と書かれていた。


 多分。あの「アリア」という令嬢は自分の立場をよく理解した上で王子の話を断ったのだろう。


 ――まぁ「王家からの話を断る」というのもかなり覚悟のいる事だけど。


 しかし、彼女の中で「これから」の事など様々な要因を加味した上で出した結論。だからこそ、王子もその事に対して責める事はしなかったのだろう。


 ――殿下は賢い方だから。


 ただ、実はこの時。イリーナに「ある話」が持ち上がっていた。それが「婚約者の話」である。


 しかし、実はこの「婚約者」に関して「誰」とはまだお茶会が終わるまで決まっていなかった。


 そもそもこんな話が進んでいた事自体お茶会が終わって次の日に聞かされたのだが……。


 ――全く。子供に何も言わずに勝手に……。


 なんてイリーナは憤りを覚えたが、こういった話はよくあり、爵位に差がある時。場合によっては高い爵位の相手が「この人を気に入った」というだけで婚約が成立する事もある。


 ただ、今回はそういう話ではなく「権力」によるモノだろう。


 いくら両親の仲が冷め切っていようと、扱いが悪かろうとイリーナは公爵家の令嬢である事には違いない。


 だからこそ、王家の権力を示すためにも公爵家であるイリーナと結婚させたかったのだろう。


 ――それは……分かり切っていた事だけど。でも……。


 もちろん。イリーナも思うところはある。何せ、イリーナもお茶会に参加する前は公爵家の力を使って婚約をしようと思ったのだから。


 ――殿下の様子を見ていたら変わったのよね。


 だからこそ、イリーナの方からは何も言わなかった。


 その結果。王家側から「婚約者に」と言われた相手は……キュリオス王子の一つ上の兄である『リチャード王子』だった。

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