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第3話


 帰り道の馬車の中。イリーナはボーッとした様子で今日の出来事を思い返していた。


「――様。お嬢様」

「っ! どうしたの」


 あまりにもボーッとしていたせいか、声をかけられている事に気が付かず、思わず体をビクッとさせてしまった。


「いえ。何やら心ここにあらずと言ったご様子でしたので」

「ああ……そうね」


 ここにはイリーナと専属メイドのフィーユしかいない。


 母は別の馬車でお茶会が終わってすぐに知り合いが主催する夜会へと行ってしまった。


 ――今回のお茶会が王家主催じゃなかったら絶対来なかったでしょうね。


 そう言い切れるくらい母の行動は分かりやすい。しかし、分かり切っていた事なのでイリーナから特に言う事はない。


 それに、イリーナはついさっきまでキュリオス王子と共にあの『アリア・ウォーレン』の魔法の様なモノによって固められてしまっていた貴族たちからの話を聞いていたのだ。


 ――でもまさか……。


「全く覚えていないとはね」

「? どうかされましたか?」


「ああ。ごめんなさい、何でもないの」

「……そうですか」


 ――いけないいけない心の声が漏れていたわ。


 イリーナが知っているのはあくまで「魔法の才能がある者は幼い頃に魔力を制御出来ずに感情の高ぶりから魔法を使ってしまう事がある」という事くらいで、どういった事が副作用として起きるかまでは知らなかった。


 そして、今回はどうやら魔法を使われた前後の記憶がキレイになくなっていたのである。


 ――まぁ、私と殿下がどういった経緯でああったのか知っているから良いのだけど。


 しかし、本人たちは一切覚えてはいない。


 ただ、騒ぎの後で言いがかりをつけようとしていたのは確かだったので、それに関してはキュリオス王子を通じて各家庭に話が行くだろう。


 ――でも、そこまで大きな処分とはならないでしょうけど。


 せいぜいお小言がある程度。しかし、それを親たちがどう捉えるかまではイリーナの知った事ではない。


「――殿下は……」

「はい」


「あの子が気になるのかしら」

「……どうでしょうか。少なくとも興味は持たれたように感じます」


 唐突に話し出したイリーナに対し、フィーユは律儀に答える。


 ――興味……か。


 確か、イリーナの時もそんな感じだった。ただ、イリーナとしてはどことなくあの時は違う雰囲気をキュリオス王子から感じていた。


「……」


 ――ダメね。もし、殿下の前に気になる人が現れたら身を引くと決めたのに。


 誰に言ったわけでもなく、自分で決めた事。


 今はあくまでキュリオス王子はアリア・ウォーレンを「興味対象」と見ている事くらいしか分からない。


 ――もう少し様子見かしら……。


 なんて悠長に構えていたところに「あの男爵令嬢に詳しい話を聞くために王宮に招待した」と手紙で目にしたのは……それから一週間が過ぎたくらいの頃だった。

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