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第1話


 そうしてお茶会が始まってしばらくした頃。ちょうどイリーナはキュリオス王子との挨拶も済ませ、少し席を外していた。


「ふぅ」


 いつもであれば様々な噂話が飛び交うのだが、今日は先ほどの事もあり、どことなく静かな雰囲気だ。


 ――殿下は「いつも通り」みたいだけどね。


 そう、あの時と変わらず笑顔で対応していた。それは文通をしているイリーナに対しても。


「……」


 分かり切っていたことではあるものの、どことなくそれが寂しい。せっかくならもっと仲良くしたいのに……。


 ――なんて、私も随分とワガママになったものね。


「ちょっとあなた! 男爵家なのに図々しいのよ!」


 そんな事を考えつつ会場に戻ろうとしていると、突然大きな声が聞こえた。


「?」


 ――何かしら?


 声がした方に向かうと、そこには数人の少年少女が一人の令嬢を取り囲んで自分勝手な主張が始まめるところだった。


 どうやら相手は先ほどの令嬢で「男爵家だから身の程を弁えろ」とか「王子に対して馴れ馴れしい」とかそういったモノばかり。


 ――全く。さっきの使用人がどうなったのか見ていなかったのかしら?


 正直なところ、呆れてモノが言えない。こんな誰が見聞きしているか分からない様な廊下でそんな話をしていればいずれ王子の耳にも届くはずだ。


 ――それにしても、あの子。男爵家だったのね。


 今までイリーナが参加していたお茶会では見た事がなかったので知らなかった。


 しかし、そもそもこの令嬢が男爵家である事は自分がよく分かっているはずだ。


 ――そういえば、さっき殿下と少し話していたわね。


 令嬢の方からではなく王子が話しかけてくれているのにそれを無視をする方が逆に無礼に当たるのではないだろうか……と思うのだが。


「大体。よくそんな格好で来られたわね! そんなだから入り口で疑われるのよ!」


 それまでもはや何を言われたのか覚えていないほど聞き流していた令嬢だったが……どうやらさすがにこの言葉は良くなかったらしい。


「な、何よ。その顔は──」


 さすがに令嬢の雰囲気が鋭いモノに変わったのは分かったらしく、令嬢たちが少したじろぐ。


「……」


 ――止めた方が良いかしら?


 そう思っていたが、そもそもこんな言いがかりをつけてくる方が悪い。何よりせっかく王子が鎮めてくれたのに……それをまた蒸し返すなんて……一体どんな神経をしているのだろうか。


 そう思った瞬間──。


「!」


 ――え!?


「……はぁ。またやっちゃった」


 令嬢の目の前にいた貴族の少年少女たちは氷の様に固まってその場で動かなくなった――。

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