秋人のダンジョン回想1
秋人はダンジョンであったことを思い返す。
次の配信で話そうと考えその前に整理しようと思ったからだ。
記憶にあるダンジョン内であったことの時系列と時間間隔は怪しい。
ダンジョンはフィールド型でない限り日が昇らない。
フィールド型でも日の出日の入りが外と一緒であったかは分からないし
場合によってはずっと昼のまま、夜のままであったりもした。
そんな空間で自分に足りないものを補うための反復練習を行ったのだ。
感覚がおかしくもなろうというものである。
秋人はダンジョンを進むには何もかもが足りなかった。
まずは覚悟を決めることにした。
家に帰って周りが初音の死を受け入れている姿を見たら自分も折れてしまうかもしれない。
まず一番に着けなくとも交渉でなんとかしようと先へ進む理由をこじつけた。
多少強くなってきた頃になると自分が普段から今のように鍛えていたら
初音は友達と潜ることはしなかったはずだと更に頑張る理由をこじつけた。
そうしているうちに生き返してもらうために早く行かなければという気持ちと
試練が大変な方が交渉が上手くに行くに違いないという気持ちが自然に同居するようになった。
不思議と焦りはなくなった。
秋人は毎日戦っていた。
今まで生きてきた常識と違う力が物をいう世界は妹を喪った無力感を埋めるには丁度良かった。
戦うことに慣れていなかったためにまず観察をした。
そのおかげでチュートリアルに気付いた。
戦いを重ね自分に足りない部分を鍛錬をした。
まず気付いたことは武器はいずれ壊れるということ。
そしてドロップ品を使う以上武器を選んでいては先に進めなくなるということだった
剣を振った。ナックルを握り拳を振った。自分が振り回されそうな鈍器も振るった。
飛び道具は弓だと矢が折れるために練習しやすい石や投げ槍の方が得意になった。
特に石は手に入れやすい上に何度も使えるために重宝した。
続けて弱い自分は逃げ足が一番重要なために走り込みを一生懸命頑張った。
回避をする。逃げて追っ手を分断をする、罠を仕掛けた位置に誘導する。
仕切り直しも出来る。
息が上がった相手との戦いは実力差を埋めてくれた。
走るということは自分の想像の外にあるくらいに強力な武器だった。
一緒に走っていたしゃむが猫なのに持久力が伸びていきびっくりしたのを憶えている。
最初はゴブリンを相手に隙を見て襲い掛かっていた。
真正面からでも余裕を持って勝てるようになったころに
相手が複数になったため再び隙を伺わなければならなくなった。
罠も考えてみたが素人では草や紐で足を引っかける仕組みを作る程度しか思い浮かばなかった。
ゴブリンの他にオークやオーガも出てくるようになったが
上層では勝てないほどの体格差や能力差はなかった。
安定して捌く余裕が出来た頃に強い個体が混じるようになった。
今度は不意打ちで強そうなやつから倒して混乱を誘うことにした。
同じ種族でも下に潜ると素早く強くなっていった。
安定して倒すことが出来るようになったころにアンデッドのスケルトンやゾンビが
出現するようになった。
動きこそ鈍いものの普通なら死ぬような状態でもまだ襲ってくる。
そして疲労もしてくれない。
鈍器のような酷い損壊をする武器が役に立った。
少し余力が出来たと思ったら新しい課題が出て必死になる。
その戦い方は誇りもかっこよさもないみすぼらしいものだった。
そうして悟る。
負けてはいけない戦いで矜持を守れるような戦い方をするには力の差が必要なのだと。
自分にはそれがないからこのように惨めなのだと。
怪我は修行中に血豆が出来たり軽い打撲などはあったが幸い大きいものはなかった。
チュートリアルにあったスライムゼリーとダンジョン内の草を混ぜた薬で大体事足りた。
草は秋人の知識では草はヨモギに似たものに見えた。何故傷が早く塞がるかは分からなかった。
そしてある時傷口を押さえて止血してる間になぜが傷が塞がり傷跡になってしまった。
無意識のうちの魔法の発露。「治癒」の目覚めである。
秋人はドロップ品を収集する。交渉の材料のひとつのつもりだった。
階層のすみからすみまで歩き走る。それにチュートリアルがあるかもしれない。
そのうち階層を進むまでドロップ品をまとめておいておく拠点のような物が出来た。
そうして数年がすぎた。




