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024:小悪魔系女子


【無事にアパート着いたよ】


 送信っと。


 これで母さんも一安心するだろう。でも、これからダンジョンに行って無事じゃなくなるんだよなぁ。何だか申し訳ない気持ちだ。できるだけ怪我をしないように頑張ってみようかな。


 ピコン。ピコン。メッセージが2つ届いた。


【良かったぁ。お母さん一安心です】

【明日シズカさんと一緒にお買い物に行くのだけれど、シズ君も一緒にどうですか? 夏服や日用品は足りていますか? お米はまだ足りていますか?】


 夫婦水入らずだ。遠慮しておこう。というかあれだけ夏服を送ってきておいてまだ足りないとおっしゃるのですか、お母さん。日用品も問題ないな。そもそも自分で買うっての。米か……米ね、どうだったかな。


『バッチリあるよー。5kgのが二袋分だね』

「お、ありがと。てわけで返信するか」


【用事あるから行かんよ】

【全部足りてる。ありがと】

【明日もそうだけど、これから何か異変が起こったり、変な予兆みたいなものを感じたら俺に連絡して。すぐ行くから】


 これで良し。ピコン。返事が早いな。


【は~い。シズ君、ありがと~。シズ君もいつでも帰ってきてね】


 さて、とりあえず食料を冷蔵庫に仕舞うか。


 



 今日の講義『人工知能』のノートを纏め終わった。


「ふぅ、比較的あっさりと終わったな」

『結局、今の人間の科学力だとAIに自意識を発生させることはできないの?』


 今のところは無理みたいだな。AIって物凄く単純化するとアルゴリズムに従って入力と出力を繰り返しているだけなんだよな。要するに機械的だ。そこに意思や思考なんてものは介在していない。


 大量のデータを読み取って分析するが、それはAI設計者の目的に合わせてパターンやルールを活用しているだけ。AIそのものが自律して何かをしているわけじゃないってのが話の肝だ。


 てなことを今日の講義で教わった。まだ頭の中に残ってて良かったよ。


 俺も全てを理解しているわけじゃあないが、AIを活用するにはそれを扱う人間が必要ってことだ。AIに仕事を奪われるってのは、結局のところ工場の自動化や手作業のシステム化と同じでより便利で楽ができるという話になる。


 あとはコストか。人間を使う方が安いか、AIを使う方が安いか。


 AIを使うのは人間なわけだ。その使う側の人間が何らかの仕事を誰かにさせる時、人間ではなくAIを選べば、今までその人間が行なってきた仕事が文字通りAIに奪われる形になるわけである。


 てなことをレポートに纏めて次回の講義までに提出しなければならない。


 あと追加で、自動車の自動運転システムが実用化された際に及ぼす社会的な影響と起こり得る問題点。社会制度は技術の発展に合わせて変容可能か、そのために必要な要素は何か。それらをレポートに纏めて期末考査までに提出しなさい。


 だとさ。うへぇーって感じ。


『へぇー、なかなか面白いね。ボク、今までそんなの考えたこともなかったよ』

「そりゃそうだろ。ダンジョンなんだし。というかダンジョンが普段何を考えているのか。そっちの方が俺は気になるね」

『ボクはいつだってシズクのことを考えているからねっ』

「そりゃどうも。そういうことじゃあないんだけどな。まあいいけどさ」


 ダンジョンは人間や動物と共生する生命体らしいから、やっぱりこんな感じのことを考えているのかな。


 この人間クソザコ過ぎるとか、この人間強すぎワロタみたいな。何か食料不足っぽいし、動物増やして肉をドロップさせたろか。資源が足りない? 良かろう、ならば採掘だ。この動物、絶滅寸前やん。ワイが保護したろ。


 ……みたいな?


『でもさ、人間だって結局は入力と出力を繰り返してるだけなのに、どうして機械には意識がないんだろうね。不思議だなぁ』


 ホントそれな。てか、まだそこが気になってたのか。


 そもそもの話、そういう意識を発生させるアルゴリズムをまだ発見できていないってだけなんじゃなかろうか。深層学習だって、人間的な学習をするためのアルゴリズムであって、別に意識を生み出すものじゃあないんだし。


『意識を生み出すアルゴリズムかぁ。そもそも、ボクとしてはどうして機械に魂が自発的に宿らないのかが不思議なんだよね。ホント疑問だよ。どうしても気になっちゃうなぁ。姿形の問題なのかな。情報処理能力に関してはスーパーコンピュータや量子コンピュータもあるし。ネットワークで並列処理してもいいよね。大容量の記憶媒体と高度な認知能力として高性能な入力装置が必要だよね。高性能な通信能力と耐久性能も持たせてあげたいなぁ。それに自己改変機能も欲しいね。あとは肝心のアルゴリズムか。流行りの深層学習を……。ううん、もっと緩くゆとりを持たせてる感じで。うーん、意識かぁー、意識ねぇ。集合無意識を生み出すには……あ、もしかしたら共生が鍵かも――』


 カレンさんや、考え事は一人でやってくれないか? ようやく勉強から解放されたのにこれでは俺の頭が参ってしまうぞ。いや、解放はされてなかったわ。


 あー、レポートやりたくねー。


『あ、ごめんね。つい気になっちゃって。だから今度試してみようかな』

「何を試すんだ?」

『機械人形への強制入魂。機械細胞の共生がもたらす集合無意識の形成とそれに伴う知的学習と自由意思の確立。ね、面白そうでしょ? 成功したらシズクにも会わせてあげるね』

「とりあえず、俺に襲いかかってこなければ会ってみたいな」

『だいじょぶだいじょぶ。仮にそうなったらシズクが倒していいからね』


 嫌だっての。





 とりあえず、ダンジョンに挑む前に大方針と探索方針を決めておこう。


 大方針:大前提として迷宮全体をマッピングする。

 1.マッピングの結果を受けて探索方針を決定する。

 2.『部屋』と仮定した扉を開ける条件を探す。

 3.ダンジョン攻略をより安全に:情報収集と創意工夫が大事だ。


 今回の探索方針:大きく3つ定めることに決めた。

 1.北西から西方面のマッピング:ネズミ部屋の確認

 2.ネズミモドキのドロップ確認:遺体を抱えるのホント嫌だ。

 3.中型モドキの出現条件・カウンティングと討伐制限


 大方針に関しては今までと変わらない。ダンジョンの全体像を明らかにする。ひたすらマッピングする。ある意味それだけだ。それがイコールでビギナーダンジョンをクリアするのに繋がる。


 今回の探索方針は実にシンプル。「ウサギモドキと会いたくない」である。あとは情報収集だ。現在、ネズミモドキだけドロップ情報が判明していない。ついでに存在していると思われる中型ネズミモドキの出現条件を探るつもりだ。恐らく、他の中型モドキと条件は同じ……だと思う。


 具体的には、物凄く面倒だがカウンティングを行い、一定数倒したらセーフルームへ繋がるT字路に戻ることを繰り返す。経験則的にそこが中型の発生ポイントだからだ。まずは10体、その後は1体倒す毎にといった具合だ。探索範囲は主に北西から西方面を中心とする。マッピングが終わり次第、中央エリアを中心にネズミモドキを狩る。


 スキルやステータスの向上や成長といった要素は考えない。経験値稼ぎもしない。今回は純粋に情報収集をメインとする。あくまでこれは事前方針である。臨機応変に対応すること。以上だ。





 セーフルームへ来て何が一番嬉しいかというと、カレンの姿をこの目で見れることだ。


『どう? ボク可愛い?』


 まさかの悪魔っ娘スタイル、吸血鬼バージョン。ふんわりとした白に近い蒼銀、蠱惑的に輝く真っ赤な瞳、ちょっぴり大胆なえっちぃ服装、ニョキっと生えた悪魔の尻尾、ファサッと広がる皮膜翼。


 上目遣いでこちらを窺う様は正に小悪魔系女子。


「よし、結婚しよう」

「もっちろん。末永く宜しくね?」


 冗談はさておき、モチベーションが上がるな。カレンは俺の扱い方をわかりすぎなんじゃないのか。


「冗談なの?」

「もちろん、本気だ」

「えへへ、やったね」


 よし、大分緊張がほぐれてきたな。いや、まだ手が震えてる。今日はネコモドキを狩るつもりはない。中型ネコモドキは恐らく出現しないはず。だから、大丈夫だ。大丈夫なはずだ。


 ウサギモドキにも会わない。そうだろ? 西方面から南側へ繋がる通路を見つけるだけだ。あればの話だが。仮に見つけても絶対に今回は南側へは行かないからな。


「……ふぅ。んじゃ、行こうかな」

「うん、行ってらっしゃい。大丈夫だよ。シズクならできる。今回はちょっとした調査だけ。でしょ?」


 その通りだ。向上したステータスを慣らすための言わば準備運動。今回の探索方針に隠された狙いはそれだ。いや、隠す必要性はまるでないけどな!


 気楽に行こう。つまりはそういうことだ。ステータスチェック良し、スキルの確認良し、探索装備一式『スポーツウェア上下、靴下、運動靴、リストバンド、サポーター』良し。カレンのおかげでやる気は十分だ。良し!


 第25回目の探索を始めようか。


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