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020:マッピング凄すぎだろ


* * * * * * ス テ ー タ ス * * * * * *

 名前:中ノ森シズク 性別:男 年齢:19

 成長率:大器晩成 才能:微才 称号:アスリート級

 パラメータ(アスリート:10 達人:15 超人:20)

 生命力= 12

 耐久力= 11

 筋 力= 10

 器用さ= 10

 敏捷性= 10

 知 力= 10

 精神力= 13

 スキル:<耐える> <突進・相棒突き> <ステップ>

     <休息> <激発> <マッピング>

 探索回数:24 獲得経験値:56

* * * * * * ス テ ー タ ス * * * * * *


 ついにパラメータの全てがアスリートの壁に達した。


 称号もなんだかアスリート級になってる。数値は全て二桁目に突入だ。最初が3とか4だった頃と比べて約三倍にも成長した形だ。なかなかに感慨深いものがある。


 しかしながら、ただ数値を眺めていても肉体的な実感は遠い。やはり、ステータスの恩恵は身体を使って初めて実感できる気がするね。


 そして、とうとう次からは達人圏内(11~15)になるのか。1上げるのに必要な消費経験値は40となる。今のところバランスが良いので残りの56ポイントは保留にしておく。これからはスキルのことも視野に入れて置く必要があるからだ。


 頑張れば自分で成長できることも教えてもらったしな。


 なので、今回獲得した<マッピング>をさっそく使ってみようと思う。スキルを使用するにはただ意識を向けるだけでいい。俺は脳裏に今まで散々苦労して歩んできた迷宮内部を思い浮かべた。


 すると。


「うおおっ、凄いな」


 思わず、ベッドの上で寝転んでいた姿勢から上半身を起こした。それに合わせてマップ画面も動く。


 まるでSFのような世界観だ。現実が拡張されたかのように半透明のディスプレイが宙空に浮かぶ。現在地がセーフルームにあることを示し、セーフルームの外側にある迷宮内部の構造が簡素ながら地図化されていた。


 こうして見ると自分の歩んできた軌跡がハッキリと形となって現れたせいか、なんだか涙がこぼれてきそうだった。


「どうどう? 良い感じでしょ?」


 ニコニコ笑顔のカレンが俺の隣で地図を覗き込んだ。地図に手をかざすして動かすと、それに合わせて地図の縮尺が変わっていく。直感的な操作も可能のようだ。


「これって俺の頭の中で処理が行われているのか?」

「そうだよ。そういうスキルにしたからね。頭の中で浮かぶ映像や画像記憶の可視化って面白いでしょ?」


 夢が広がる言葉である。


「確かに面白そうだな。これって地図以外のものを表示することはできるのか? 例えば、俺の妄想とか過去の記憶を映してみるとかさ」


「うーん、今のシズクのキャパシティだとそこまではね。スキルは固定化した能力って前に教えたよね? このスキルは地図に関連する能力に特化させてあるからあんまり応用は利かないんだよ。でもでも、シズクの能力値に応じて機能が解放されていく仕様だからね。頑張れば似たようなこともできなくはないってところかな」


 マッピング能力の解釈次第ってことだろうか。例えばカメラで記録した実写画像を地図に合わせて表示できるサイトがある。今は方眼用紙に描かれたようなちゃっちい地図でも、俺の能力値が向上すれば記憶を完全に再現した映像地図を出力させることができるかもしれない。


 また一つ、ステータスを向上させたい理由が増えたな。


 ん? ステータスか。そういえばステータス画面もこんな風にいつもポンッと表示されているんだよな。やってることは同じなのにどうしてこんなに新鮮に感じるんだろう。


『余裕の差じゃないかな。シズク、ステータスを弄るときってそれ以外のことなんて考えたことなかったでしょ?』

「確かに。あの画面と向き合う時はいつもいっぱいいっぱいだったな。数字のことしか頭になかった気がする」


 なるほど、今まで大して気にもとめなかったことに気づけるくらいに余裕が生まれてきたってことか。その分、俺の視野が広がったわけだ。以前の俺だったらマッピング凄えで終わっていたのかな。


 そんな具合にステータスやスキルの確認を終えたところで。


「そういえばカレン、今何時だ?」

「んー、深夜5時ってところかな」

「いや、それはもう朝の5時だろ?」


 さて、どうするか。ミラクルベッドのおかげでこれっぽっちも眠くない。しかし、肉体はともかく精神的には横になって休みたかった。 


「ここで休めばいいんじゃないかな。一緒に添い寝してあげようか?」

「生殺しが酷いだろ、それ。でも、そうしようかな。今はちょっと何もする気が起きない」


 しかしながらベッドに再び横たわると、瞬時に精神的な疲労は消し飛んでしまった。気分的にはたった今8時間睡眠から気持ち良く目覚めたような感覚だ。違和感が凄いことになっている。


 先ほどまでなかった気力が満ち溢れている。なんならもう一度迷宮に挑んでもいいくらいだ。けれど、流石にそれはやめておいた。


 今日の予定は午前に講義が一つだけ。午後は喫茶店のバイトがシフトに入っている。講義は2時限目なので時間的な余裕はあるが……。


「ねっ、このまま横になってお喋りしようよ」


 カレンはいつの間にか大量のクッションを抱いていた。それを俺の背中に押し込んで、自分用にもそれを設置した。クッションを背もたれにするように俺の隣にちょこんと座る。


 手を伸ばしても触れられない。それでも彼女はそこにいる。


「そうだな、それもありだ」


 それから数時間ほど、とりとめのない話をしながらゆっくりとした時間を過ごした。





 あれやこれやと色んな作業をセーフルームでやってから、俺はアパートの自室へと戻ってきていた。もはや、自室にいる時間よりもあちらにいる時間の方が長いような気がする。


 カレンとのお喋り小休止を終えたあと、俺はノートパソコンに迷宮での探索活動を記録した。ステータスの急激な上昇による精神的な不安や活動方針についての反省点などを記述する。


 ステータスの恩恵は俺を幸せにするのか? といったエッセイを書くつもりはない。ないが、実際問題として迷宮探索に支障を来すのは困る。ステータスとスキルによって俺自身がどう変わっていくのかを、しっかりと記録として残すことに決めた。これ、小説投稿サイトに載せたらノンフィクションになんのかな? すぐエタりそうだけど。


 で、そんな作業を終えて自宅に帰ってきたところである。


「とりあえず、風呂入るわ」

『いってらー、くふふ』


 プライバシーもクソもありゃしない。別に今さらカレンに見られても困るものはないが。こいつのことだから俺の内臓の色も知っていることだろうな。


『シズクの脳みその内側の色もね』

「こわっ」


 ようやくシャワーを浴びることができた。この時間帯なら既に問題ないだろう。時刻は9時を回っている。アパートの住人たちの活動時間は定かではないが、壁ドン、天井ドン、床ドンされることは流石にないはずだ、たぶん。


「うーん、ベッド効果で腹が空いていない。けど、食ったほうがいいんだっけか」

『もちのろんだよ! ちゃんと朝ご飯食べないと元気でないよ?』

「ほーい、カレンまま」


 と言っても、大したものがあるわけでもない。冷蔵庫からベーコンと卵を取り出して、手際よくフライパンに投入した。ベーコンを下敷きにして卵を割る。半熟は苦手なので黄身を菜箸でわざと崩す。塩コショウをふりかけてから蓋をする。弱火にして後は放置だ。


『おおー、手慣れてるねー』

「言っとくが俺に作れるのは目玉焼きくらいだぞ? あと肉を焼くだけだ」

『あれ、まえ焼きそばってやつ作ってなかったっけ?』

「カップ焼きそばの汁を捨ててからフライパンに投入するだけだよ。豚肉とかウインナーを時間に合わせて先に焼いてから合流させて、汁気を飛ばしてからソースを掛ける。よく混ぜればほいっと肉焼きそばの出来上がりだ」

『おおー、ぱちぱちぱちー』


 栄養バランスは崩壊しているけどな。コーンフレーク先輩とバナナ先生に頼りっぱなしだ。あとは学食のカレーか。学食がなければ死んでいるんじゃなかろうか。


 出来上がった目玉焼きに醤油をかけてご飯の上に乗せながら一緒くたにして食べていると、ふと閃いた。


「そういえば、マッピングはここでも使えるのか?」

『ふふーん、試してみたら?』


 そりゃそうだ。というわけでメシを食っている最中にスマホを見るような感覚でスキルを使った。


「出た出た。へぇー、面白いな。今まで俺が歩んできた歴史って感じだ。マッピング凄すぎだろ」

『えへん、過去に遡って地図化できる優秀なスキルなんだよっ。ね、凄いでしょ?』


 カレンは褒めて伸びるタイプのようだ。こういう姿勢は見習いたいね。


「すごいすごい。意外と細かく情報が載ってるんだな。これって俺がちゃんと覚えてるってことなのか? それともスキルが記憶に干渉しているとかそんなん?」

『おざなりだなぁ、もう。答えはどっちもだね。シズクが忘れちゃっていると思っているのは、ただ思い出せていないだけだよ。頭の中にはまだちゃんと残ってるんだ。スキルはそういった無意識領域や記憶中枢にも手が届くって感じかな』


 どういった技術、いや魔法を使えばそんなことができるんだろうな。まるで想像もつかない。情報収集能力とか情報処理能力がべらぼうに高いとそんなことができるようになるのかね。


「さて、ごちそうさまでした」


 朝食も食べ終えたし、さっさと大学に行くとしようか。その前に食器を洗わんとな。あと、買い物リスト作らないと。

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