ポーション
今日も今日とて転生チーター三人組は、作治の働くアミーラの道具店の前にゴザを轢き、勝手に薬草の販売を始める。
「ヒャッハー!また薬草が売れたぜー!」
「フフフ。僕の作戦は完璧だ」
金持チーターは眼鏡の位置を直しながら不敵に微笑む。
「さすが金持チーターだぜ!ところで質問があるんだが」
「なんだい?」
「冒険者共はなんで俺達から薬草を買った後、この道具店に入っていくんだ?」
「持っている物を売る為だろう。例えば道具屋で銅貨八十枚で薬草を買ったとする。それを再び道具屋で売ると売値は四十枚だ」
「つまりどういうことだ?」
「僕たちは銅貨四十枚で薬草を売っている。だからこの店で薬草を売ったとしても利益にはならない」
「そうか!金持チーター。お前頭いいな!」
「それだけではない。実は今まで黙っていたが、僕は二桁の掛け算ができるのだ」
「な!それは本当か?!」
「掛け算九九とは神の力を制御するための技術と聞いた事があるぞ?!」
イケメンチーターと魔力チーターはおどろき、とまどう。
「それだけでなく、僕は二桁の割り算もできるのだ」
「信じられん。まさか掛け算と割り算を同時に扱える人間がこの世に存在したとは・・・」
「いや、それくらいではなくては。財布の臭いだけで六日先の未来を予見することなど不可能なのだろう」
三人のチーターがそんな話をしている間にも再び冒険者がチーターの露店で薬草を買い、アミーラの道具店に入っていった。
「この薬草を買ってくれ」
マクスはカウンターの上に薬草を五個。置いた。
「そして、高級傷薬を売ってくれ」
「ほい」
アミーラは高級傷薬をカウンターの上に一つ。置いた。
「借金の金貨四百枚を返すまで、銅貨四十枚の買って売値銅貨二百五十枚の傷薬を売る仕事が続くなぁ・・・」
そんな事を呟きながらマクスは店の外へ出て行った。
店の奥の調合室でメノウの乳棒ですり鉢の中の薬品をすり潰す音がする。
「サク様。次はその緑の薬草と赤い薬草を混ぜてください」
「マルレーネさん。目が見えないのによくわかりますね?」
「匂いでわかります」
「それにしても助かったよ。マルレーネさんが薬剤師の免許を持っていたおかげでようやくこの道具屋でも薬の販売ができる」
「お店の前で安売りしている薬草を買って、調合して、高く売れば儲かりますからね」
マルレーネはそう言って微笑んだ。
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ポーションとは調合された薬の総称である。
その調合レシピは経験学的色彩が強く、自信や自分の妻を実験にして薬を完成させた華岡青洲のような医者もいる。
もちろん、赤の他人の体で新薬の実験をする者も大勢いただろう。
ファンタジー世界ではモンスターの内臓や牙などは頻繁にポーションの材料として用いられる。
単純な回復薬もあれば、一時的に能力が上昇するもの。体が透明になるもの。
実にさまざまな魔法の薬が存在する。
手元にレシピがあるので、その一部を紹介する。
試しに一つ作ってみてはいかがだろうか。
傷薬
オイル、酢、蜘蛛の巣
古代ローマで使用された怪我の治療薬のレシピである。あんまり効果がなさそうなのは気のせいだろうか?
テトラキマゴゴン
グリーンマッシュルームの胞子とレッドドラゴンの生き胆
産業革命直後のイギリスの新聞広告に乗っていたポーションである。大変効果がありそうだ。
難点があるとすれば材料が少々入手し難い点であろうか。
ギリシャの火
石油と硫黄
十字軍遠征の際、イスラム教徒側が使用したものである。
投下範囲に水では消せず、海の上でも燃え、砂でなければ消せない炎を吹きあげさせる。
魔力を持たない者を火炎術者に変える事ができるので大変有効な攻撃用ポーションと言えよう。
ワルプルギスの夜召喚の薬
ドクパセリ
チョウセンアサガオ
イヌホオズキ
ケシ
新生児の血肉(初産限定)
常夜にワルプルギスの夜を呼び出すためのポーションである。
世の中が嫌になったら作成するとよい。
きっとトラックに飛び込むより遥かに楽しいことが起こるだろう。




