ツルハシ
冒険者達は切り立った崖沿いの岩肌を掘る。
ツルハシを振りかざして。
「ヒャアッ!間抜けな連中だぜぇ!!」
「誰だっ!」
作業の手を休め、一斉に振り向く冒険者達。
「ならば答えてやるぜっ!」
崖の上に、三人の男が立っていた。
「俺は魔力チーター!超絶魔力の持ち主!」
「俺は金持チーター!超絶金持!」
「俺はイケメンチーター!超絶イケメン!」
『三人そろって、ジェットストームチーター!』
三人の背後で爆発が起こった。
崖が崩れ、土砂と共に三人組は転がり落ちる。
「ふ、魔力チーターの俺が咄嗟にバリアーを張らなければ即死だった」
「一体なんなんだアンタたちは・・・」
地面を掘る作業をしていた冒険者の一人が尋ねた。
「痴れた事!」
「お前達、ここで竜の骨を掘っているらしいな?」
三人のチーター達は尋ねた。
「ああ。そうだけど?」
「掘り起こした竜の骨をギルドに納品するんだ。多ければ多いほど報酬が貰える。制限はない」
「その竜の骨は全部おれたちのもんだ!」
「ヒャアッ!いただきだぁ!」
「そんなこと言ったって、あんた達ツルハシなんて持ってないだろ?」
「そうだそうだ」
「俺にはこの地面を掘る魔法があるっ!」
魔力チーターは地面に向かって手をかざした。
まぁるい空洞ができ、斜面からほぼ一体の完全な大型爬虫類の骨格が姿をあらわした。
「こいつはすげぇ!ティラノサウルスだぜ!」
「こいつで金貨は全部俺達ジェットストームチーターのものだぜ!!」
「あばよ、下等な中世ヨーロッパ世界人共めっ!!」
三人の男は竜のほぼ原型を留めた骨格を拾うと、チート加速で街に戻って行った。
冒険者ギルドの仕事広告が貼り直された。
「『竜の骨拾いは終了しました。皆様のご協力に感謝いたします』?なんじゃこりゃ」
マクスはギルドの掲示板の記事を見て、そんな事を呟いた。
「ああ、それかい?国中の山や畑を魔法でほじくり返して竜の骨を探す連中が現れたんでね。お上から禁止令が出ちまったんだよね」
「なるほどねぇ」
「もっとも、依頼人は別にかまわねぇって言ってたけどね。欲しいもんは手に入ったからって」
「欲しいもん?」
「立派な竜の骨だよ。運んでくる際に爪だの頭だのバラバラだったが、ありゃまるまる全身一匹分あったな。組み合わせれば元通りの姿になるんじゃないのか?」
「ふーん」
マクスはとくに気にしなかった。
どこぞの金持がきっと竜の骨を自分の屋敷に飾るのだろう。
「ところで、何か儲け仕事はないのか?」
「ツルハシを持って金山を採掘する仕事なら」
「それやるぜ!」
「ローヌ王都の直轄だ。魔法の使用は厳禁。金山役人に納品し、それから改めて報酬を受け取る事」
「普通に働くだけじゃねぇか」
「当たり前だろう?土地は誰かの者なんだ。金だの鉄鉱石が出るからと言って、無許可で勝手に採掘されたらたまらんよ。そういう事をさせないためにギルドってもんがあるんだ。だからな」
ギルドの受付親父はマクスの肩を力強く叩いた。
「そういう無法者が現れた時はお前ら勇者様の出番だ。不届き者を懲らしめてやれ」
「おう、任せておけ!」
この中世ヨーロッパ風ファンタジー世界で産まれ、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界で育ったマクスという冒険者の青年は、力強く答えた。
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ツルハシとは木製の棒の先端に尖らせた金属を据え付けた道具である。主として土木工事などに用いられる。
生物を殺傷できなくもないが、重量バランスや構造からして、相手の攻撃を受け止めることはできないだろう。基本的に武器としての使用はお勧めしない。
冒険者の中にはわざわざ荷物になるツルハシを道具店で購入して旅をする者がいる。
彼らの目的は金や銀といった即物的なものや、装備品を強化するための鉄鉱石類である。金鉱石類は当然資金になるし、鉄鉱石は装備品を造ったり、強化するのに用いられる。
冒険者が採掘する際には様々な問題が考えられる。
まずはモンスターの脅威である。
これはまぁ当然として、金や鉄鉱石が豊富に採れる。と聞けば、冒険者同士の採掘競争が始まる。
十数名のギルド員がその一角を占拠し、ひたすらにツルハシを振るい続ける。
それだけならまだしも、通りすがる他の冒険者を武力行使して排除しようとする。
モンスターを無視して。である。
さらに現実的問題として資源の枯渇が考えられる。
ファミコン時代のコンピュータゲームには長年の採掘によって鉱脈資源が枯れつつある鉱山がよく登場する。
その世界の大地の裏側まで堀進むならともかく、地球の物理法則がほぼ当てはまる世界なら鉱山資源が枯渇する、というのが普通だろう。
基本的に鉱石資源というのは希少なものであればあるほど採掘しにくく、枯渇しやすい傾向にある。
無計画に資金を浪費したり、装備を開発して、いざ決戦。という時に資源がまったくなくて難儀するはめになった提督、殿様、社長、王子は数知れない。
さら成る問題は重力との戦いだ。
なぜ重力が問題になるのか?
その世界が物体が上から下に落ちるのならば。
軽いものの上に重いものが乗っていると、下にあるものが潰れてしまう、そんな当たり前の世界ならば。
おそらくこうなるのではないのだろうか。
莫大な予算をかけられて建築された強固な要塞がある。
その近くには鉄鉱石を採掘する鉱山がある。
要塞にいる兵士に武器を支給するため、鉱山から鉱石を採掘する。
「おら!死にたくなけば働け!」
「なぁ。兵隊さん。最近雨漏りが酷くないですか?」
「今は梅雨時だ!雨が降るのは普通だろう!それより鉄鉱石の採掘量が落ちてるぞ!」
「そんな事言っても、掘り続けてを続けていれば石ってのはいつかはなくなるもんですよ?」
「そんな事はない!ほら、そこの柱みたいになってるところ。光ってるじゃないか。削ればまだ鉱石が掘れるぞ!」
今日も鉱石を掘る音が聞こえる。巨大な要塞の下から・・・。




