ガラクタ
アミーラの道具店経営第一日目。
記念すべき最初の客は商品を買いに来たわけではなかった。
その小間物売りの男はカウンターに鞄から出したゴミの山を並べ、作治に購入を迫ったのである。
「見て下さねぇ旦那!こいつは夜にも珍しい角のついた兎の頭骨!めったに手に入らない逸品ですね!」
「それ、ただの一角兎の角だから」
「さらに木から成長した牡鹿のツノだ!こいつを煎じて飲めばどんな病気もたちどころに治るってわけですよっ!」
「ツノってのは人間の歯と基本同じ成分でできているんだよ。そんなもので病気が治ると思うかい?変な迷信を信じて絶滅危惧種を増やさないでくれよ」
「ならこいつは珍品中の珍品!名品中の名品だ!王立魔術教会のテザクリエス先生が本物と認定した一級品!!そいつも人間の女が産んだ卵の欠片だぜっ!!!」
どうみてもニワトリの卵のカケラにしか見えなかった。
「養鶏業者に売ったらどうだい。砕いて売ればエサぐらいにはなるだろう」
「けっ、魔法学科のニホン人と聞いて来てみりゃトンだ節穴やろうだぜ!二度と来るか!」
「塩をまきたいけど高いんだよなぁ。まぁいい。早く帰ってくれ」
小間物売りは入り口の扉を蹴って出ていった。
入れ替わりにアミーラが戻ってきた。
「今のはなんじゃサク?」
「ただの冷やかしだよ。客じゃあない」
「冷やかしとな?」
「ああ。ガラクタを買えってね。一角兎のツノとか、動物の頭に加工した木彫り細工とかね。もちろん断ったよ」
「そうであったか。次はちゃんとした客が来るとよいがのう」
作治は問われたことに、事実をありのまま伝えた。
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ファンタジー世界にはなんの価値もないガラクタというのが存在する。
ダンジョン奥深くで手に入れても、苦労して街に持ち帰っても金貨一枚の値打もない。
最悪買取を拒否される。
荷物になるだけなのだから、ガラクタなんぞ片っ端から捨ててしまうべきなのだ。
老いも若きもあらゆる人にお馴染みのもので、村にも街にも城にもあり、それらは神によって創造され、下女によって通りに投げ捨てられ、子供達はそれで遊ぶ・・・。
そんな薄穢い石ころに人間を不老不死にしたり、鉄くずを黄金にするような力なんてあるわけないのだから。




