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 作治はアミーラと共にイスカンドリアの港にやってきた。

 今日の仕事は極めて簡単だ。

 陸揚げされる荷物を受け取って、街中の取引先に直接届けるだけ。

 子供にもできる簡単な仕事だ。

 と、自分より年下にしか見えないアミーラは作治にそう説明した。

 作治達が港内を歩いていると、空っぽの大きな湯船のような空間があった。

 水はまったく入っておらず、その中で大きな船が何本もの丈夫そうな滑車で吊り上げれ、その下に多くの人間が何かしらの作業している様子が見て取れる。


「なんだここ?」


「なんだサク。入渠も知らんのか」


「ニュウキョ?」


「まぁお主の故郷のニホンという国は港など縁のない山国なのだろう。説明してやるとだな。入渠とは損傷した船舶を港内の船渠に留め、

水から引き上げて普段目の届かない場所まできち~んと修繕してやることを言うのだ」


「なんだ。ドック修理のことか。それならよくやるよ」


「よくやる?ではサク。尋ねるが、お主の故郷のサイタマとかいう街は近くに海だの、大きな湖だのはあるのかな?」


「え?ないけど?」


「適当なことも言っても妾を騙そうとしても無駄なことだケケケ」


「・・・・・」


 複数の空の、あるいは船舶の修繕中の船渠を抜けると、マストを折り畳んだ貨物船が係留された桟橋に辿り着いた。目的の船はどうやらこれのようだ。

 アミーラは軽快に、作治はびくつきながら橋かけられた木板を渡る。

 船上でアミーラが受け取り書にサインしたのは作治がなんとか抱えられる大きさの木箱である。

 つまり、運ぶのは作治の役目ということだ。

 何が入っているのだろうか。魔法の品だろうか。切れ味鋭い名剣だろうか。

 作治は木箱の蓋を開けてみた。


「・・・なにこれ」


 瓶。コップ。窓。入っていたのは大量のガラス片だった。


「何をしているのだサクよ」


「アミーラさん。これ中身ちゃんと確認した?入っているのただのガラクタだよ?」


「ガラクタも何もこれが商品だ」


 アミーラは毅然とした態度で作治に言う。


「いや。だって」


「やれやれ。リサイクルの概念も知らないとは。これだからニホンジンは三等民族なのだ」


「り、りさいきゅるぅううう?!!」


 作治は素っ頓狂な声をあげる。


「よいか。割れたり砕けたガラスは数多の人間にとって無価値なものなのだ。それを同じ重さの銅貨一枚で買い取る。それを工房で一旦溶かし、新たなガラス製品に造り直してから銀貨一枚で売るのだ。もちろん妾の店でも取り扱っておる。冒険者向けに、水を入れたり、魔術師錬金術師が薬剤の調合を使うガラス瓶だ。ひとつ金貨一枚だぞ」


____________________________________


 港は船が安全に停泊し、荷物の運搬や人の乗り降りがしやすいように設備を整えられた設備で

 波の穏やかな湾内、大きな河の岸辺に造られる。

 ファンタジー世界の輸送手段は基本的に馬車しかなく、その輸送量には限られたものだ。

 その点船舶輸送ならば大量の荷物を一時に運ぶことが出来る。

 遠隔地から異国の珍しいコショウなどを仕入れ、自国で輸入、販売する貿易も可能だ。

 国内外の商船、客船が出入りする交易港には様々な施設が建ち並ぶ港には船を係留する桟橋。

 商品を一時的に保管する倉庫。新たに船を建造したり、修繕を行うためのドック。交易所。税関などがある。

 大勢の水夫、船大工達が忙しそうに働き、交易商人達が商談を行い、税関の役人が荷物を調べ、時折警備兵が歩き回る。その隣を荷物や乗客達が通っていく。

 遠い異国から食品、原材料、嗜好品などを積んだ貨物船や、旅行客が大勢乗った客船が安全に接岸するためには岩のない場所。

水深のある程度ある水域でなければならないだろう。

 もしかすると異世界には毎年のように沈没事故を起こし、その度船長が乗客を見捨てて真っ先にボートで逃げる、そんな国があるのかもしれないが、少なくとも港というのは

その正反対の船が安全に入港でき、船体の修理と物資の補給ができる場所であるべきだろう。

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