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巻物

「さて、お次はこの手紙なのだが」


 アミーラは巻物状の物体を手に取った。


「それ、呪文書か何かじゃないの?」


 作治は尋ねた。


「妾は魔術の行使は不得手だが、魔力感知能力は特異でな。これは魔法の品ではない。文字が書かれているのは確かなのだが、書き文字で魔術文字でもなさそうでな」


 アミーラはテーブルの上に巻物を広げた。


「あ、これ日本語だ」


「なに?」


 自分が全く読めなかった何回複雑怪奇な暗号の様な文章を作治が読めると言ったのでアミーラは酷く驚いた。なにしろその巻物には種類の違う、三種類の言語で記載されているのだ。解読しようがない。

 しかし、作治は、ひらがな。かたかな。漢字のすべてを読むことができた。


「まぁ。サク様読めるんですか」


「えっと、『私は日本人泉川彼方』」


「た、たかだか巻物がいいきになるなよっ、この三等民族がっ!!」


 作治はアミーラを無視して続きを読む。


「『膝に噛み傷を受けてしまった。もう歩けそうにない。最初の依頼クエストをこなして、その報酬と合わして一気によい装備を考えた私がおろかだった。こんな事ならば武器屋で金貨十枚で売っていたたけざおを買っておけば。道具屋でやくそうを買っておけば」


「どういうことかの?」


「遺書だね。これ。僕たち同様店員にコーヒー豆を取ってきて。って頼まれて、簡単に終わると思ってたら魔物に袋叩きにあって死んだっぽい」


「まぁ。可哀そう・・・」


「サク。続きを頼む」


「『「イセカイ・チーター・レベル・イチ?変な名前だな。まぁいいさ。あんた素人だろ。俺と組まねぇか?報酬は山分けでいいぜ」そう言ってくれたあの体格のいい戦士の誘いを断らなければこんなことには。何もかもが遅すぎる。ああ。扉をひっかく音が聞こえる。あの扉があいた時、やぶれたとき、私は!わたしハ!!』」


 作治は、巻物を閉じた。そして白骨死体のそばにそっとおく。


「サク様。つまりどういうことなんでしょう?」


「つまりですね。マルレーネさん」


 作治は、アミーラに頭を下げた。


「さっきは生意気言ってすいませんでした。一緒に冒険してくれてありがとうございます!!」


「うむくるしゅうない」


 ほぼ牛乳のコーヒーを飲みながらアミーラは言った。


_________________________________


 古代エジプトにおいて王の墳墓に副葬品として巻物が埋められたそうだ。

 発掘された物は全長三十メートル以上もあり、イギリスの大英博物館に所蔵されている。当然ながらパピルス製である。

 東洋、中国では木簡といって木や竹に文字を書き、それを紐で結んで記録をつけた数千年前の歴史書が存在する。

 ただし、土に埋もれて数千年後。現代になって発掘されたはいいが、紐が千切れてバラバラになっており、一部が欠損したり、意味がよくわらない事も多い。

 中国には山海経という地学書があり、これが木簡で書かれた書物である。これによれば、中国の東にある島国は玉藻の前という尾が九本ある狐の女王が支配しているそうである。

 考古学者にとっては発掘された文書に書かれた内容がいかなるものであってもそれは当時の人々の生活を知るための貴重な資料であり、「牛肉と卵をまぜたものスープを夕食にたべた」とあれば食文化の資料であって、「パンを買う1フス」とあれば物価の資料なのだ。

 中世ヨーロッパ世界で筆記具として用いられる羊皮紙であるが、材質が固いため巻くのに向いておらず、あまり巻物は製造されていない。巻物は中世文化圏の産物ではないといえる。

 しかもファンタジーの世界は広い。

 海の上を水上スケートをしながら、巻物を広げ、そこから妖精を召喚して戦う魔術師だっているかもしれない。

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