コイン
「では、冒険を終えたので戦利品の山分けと参ろうか」
メイフラワーハウスに戻ってきた作治達はとりあえず長方形のテーブルに座った。
アミーラがコーヒーを三つ注文する。
最初からカフェオレになったコーヒーが運ばれてきた。
「メイフラワーハウス地下倉庫内で拾ったお宝は、まぁこれだけだな」
白骨死体ひとつ。
手紙。
そして、白骨死体が持っていた金貨百二十枚。
以上である。
厳密には作治がヒノキ製の棒を拾っているのだが、それはお宝勘定にされていないらしい。
「白骨はあとで弔うとしてだ」
アミーラは金貨を指さした。
「この金貨百二十枚。三人で四十枚づつ分けるという事でよいな?」
「それっておかしくない?」
作治は異議唱える。
「僕は迷宮内でみんなの盾になったり、人間魚雷になったりしたりしたよ。つまり一番苦労したんだ。だから一番金貨を貰う権利があるはずだ」
「サク。たとえばある冒険者の集団に中に、魔法学科の特待生がいたとしよう。とても強い魔法使いで、回復魔法も攻撃魔法も使いこなす。剣術もできる。どんな怪物でも一瞬で倒してしまう。冒険で金貨一万枚を手に入れて彼は言う。『俺が一番活躍している。この金貨一万枚はすべて俺のものだ』」
「なにそれ?」
「極端な例え話だ。他の者が単なる荷物持ちで冒険の旅など無意味であろう。従って、だ」
アミーラは金貨を四十枚づつに分けた。
「作治が四十。マルレーネが四十」
アミーラは作治とマルレーネの前に金貨の山を築いた。
「そして妾が四十だ。これで問題なかろう?」
「うーん。なんとなく騙されているような。でも正しいような」
「金貨はともかく、私は楽しかったらよかったです。また御二人と御一緒に冒険がしてみたいです」
マルレーネは牛乳の方が多そうなコーヒーを飲みながらそう答えた。
関係ないが、コーヒー代はアミーラが出したらしい。
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お金がなくてはアイテムが買えないのは中世ファンタジー世界でも同じである。もちろん殺して奪うなら話は別だ。
冒険者は基本定職を持たない流れ者だから迷宮を財宝を求めて歩き回ったり、モンスター討伐の仕事をしてお金を稼がなくてはならない。
そういえば迷宮内に武器防具、お金といったものがよく落ちているが、あれは誰が置いていってくれているんだろうか?まるで自分達の前にここで誰かが力尽きて倒れたみたいだなぁ。事情はよくわからないが、中世ヨーロッパ世界には親切な人が随分とたくさんいるものだ。
現実の中世ヨーロッパの商人達は常に天秤ばかりを持ち歩いていたらしい。重さはごまかせないため、贋金など通用しないというわけだ。
一般の商取引では青銅貨が多く使われていた。貨幣の鋳造技術が低くとも、そのコインを造った国が戦争で滅んでも、金貨は金。銀貨は銀としての価値が残る。その希少性と信頼性は他に代えられない物がある。
またファンタジー世界にはドラクエの”わらいぶくろ”やウィザードリィの”クリーピングコイン”のようにお金そのものがモンスターとして冒険者たちの前に立ちふさがる事もある。目の前にお金があるからといってすぐに飛びつくのは禁物である。




