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闘技場

 闘技場は異様な歓声に包まれていた。

 王都ローヌの郊外にあるこの闘技場は隣接した捕虜収容所と監獄に挟まれるように建設されている。

 収容所には魔王軍の兵士。監獄にはごく普通に人間の犯罪者を。

 重罪人、死罪を言い渡された者を魔軍の兵士と戦わせて、生き延びることができれば無罪放免。

 魔王軍の捕虜も、生き残る事ができたのならば魔王領に送り返される。

 酒や食べ物を売る店が並んでいるのは祭りの雰囲気のそれと似ているが、掛札を売る賭博屋が堂々と並んでいるのが相違点だろう。

 掛け金や倍率は大会によって様々だが、この大会の運営は『非常に優秀』であり、『絶対に足を出さない』。たとえば客足を絶やさぬよう毎月出し物を帰るのだ。

 実戦再現すると称して、闘技場内に流れのある川(勿論魚も放つ)造ったり、本物の樹木を何本も植えてみたり。騎馬兵に槍突撃の試合を開催してみたり。

 今月の『出し物』もそんな催し物の一つだ。発案者は女王であるエリナ殿下、らしい。


「ジャスィーナ修道院長、如何かしら。お気に召しまして?」


「そーねー。あんたらしい趣味だとは思うわー」


 ジャスィーナはエリナ女王に生返事を返した。

 白い砂で馴らされた闘技場には、人間が十一人。もう一方の陣営にはトカゲだの、オオカミだの、魔王領の国の住人が十一人。

 それが豚の頭のような物を蹴っていた。もちろんそれは、豚の頭などではない。

 それは、人間がオークと呼んでいる生物の頭部であった。魔王領の住人にとっては同胞の頭を蹴り飛ばして遊べ。そう強要されているようなものだ。


「古代魔法文明の時代には、スポーツを通じて魔法学科の生徒たちの技量を図ったり、戰をしている国同士の親交を深めたというわ」


「これがねえ」


 人間の方は比較的平気な顔をして豚の頭を蹴っている。それに引き換え魔物たちの方は明らかに嫌そうな顔をしている。

 自分達の陣地の方にどんどん押し込められている。

 だが、人間が全員魔物側の陣地に入ったところで状況が変わった。カンガルー頭の獣人が豚の頭を力強く蹴り飛ばしたのだ。

 攻め込んでいた人間側の陣地には誰もいない。コロコロと頭は転がり、突き立てられた二本の長槍の間を通過した。


「あら?初ゴールは物の怪チームのようね」


「左様でございます」


 女王のそばに控えていた盲目の司書が答えた。


「これ、どういうルールのゲームなわけ?」


 ジャスィーナは競技場で球技の試合を見るのは初めてだ。いや、蹴鞠ぐらいはしたことはあるが、知的生物の切り落とした頭を蹴る試合というのは見たことも聞いたこともない。

 故に女王にルールを尋ねた。


「今、魔王両側の連中が豚人間の頭を蹴って、突き立てた槍と槍の間を通ったのはご覧になりまして?」


「それがゴールなのよね。で、互いのゴールに球を蹴り入れて、制限時間内に多く入れた方が勝ち?」


「いえ、違うわ一点入れるごとに相手チームの選手の心臓を突き刺しますの。それで最初に全滅した方が負け」


 鉄製の扇で己に風を送る女王の背後で、人間の選手の絶叫が木霊した。


__________________________________________


 多くのファンタジー作品には闘技場もしくはそれに該当する施設が登場する。

 そこでは日々人間同士あるいは凶悪なモンスターとの生死を賭けた戦いが行われている。

 勝者には莫大な財と名誉が、そして敗者には死が待っている。

 モデルは古代ローマで行われていた剣闘大会であり、剣闘士同士の戦いだけでなく戦車シャリオットを使ったレースなども行われていたようだ。

 一般的な闘技場は円形、もしくは楕円形であり、現代の競技場とほぼ変わらない構造となっている。

 相違点としては、選手の控室の他にモンスターを飼っておく地下牢が設置されていることだろうか。

 カジノの内部に闘技場を設置して、火を吐いたり魔法使うモンスターを戦わせる

 ドラクエ世界の人々は余程己の強さに自信があるのか。それとも危機感がないのか。万一檻から怪物たちが逃げ出して街で暴れたらどう責任を取るつもりなのだろう。

 そのような社会的不安要素も内包しつつも、闘技場で剣を振るう若者たちは多い。

 彼らの多くは戦争捕虜や犯罪者などで、処刑を免れる代わりに見世物としての殺し合いに参加させられることになる。

 勝ち続け、生き残った者だけが自由を手にする事ができるのだ。戦わなければ生き残れない。

 借金で首が回らなくなった冒険者が闘技場の試合で返済を図ることもある。

 場合によっては闘技場の大会のみで生計を立てる者もいるだろうし、大勢の観衆の前で目覚ましい活躍をするのだから貴族や大商人に召し抱えられることもあるだろう。

 ただ、こういう大勢の観客の集まる場所というは純粋な戦い以外の事件が起こる場所でもある。

 名探偵コナンシリーズでは、主人公がサッカー場に訪れる度に時限爆弾を仕掛ける犯人が現れるし、ゴルゴ13のように群衆に紛れて要人を暗殺しようとする者だっているかもしれない。

 人殺しはないでも、地元の盗賊ギルドが賭博の八百長をする事はありうるだろう。

 まぁ賭博というのは八百長などせずとも最初から胴元が得をするようにできているものだ。

 一番人気の選手が優勝したら足が出るような、そんな配当の仕方をすようなマヌケは裏社会で長生きでないだろうが。

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