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思い込みで舌が死んだ日

今日は芽衣がシュークリームを作ってくれる。

心はルンルンだ。今にもオーブントースターに頭を突っ込んでしまいたい。


「冷めるまで待てるか」

「待てる!」

芽衣はお菓子を作るのもすごく上手だ。


芽衣が作ったシュークリームは全部で6個。

「全部食べてもいい!?」

「俺の分は食べたらあかんで」

「作った本人は食べれねぇのかよ」

和気あいあいとそれぞれシュークリームに手を伸ばす。

「ちなみにこの中にひとつ激辛シュークリームあるからよろしくな」

皆の手がピタリと止まった。

…よろしくとは、どういうよろしくだ?


「聞いてないよ!甘くてふわふわシュークリームって言ってたのに!」

芽衣に思いっきり抗議する。

「この中のどれが激辛か教えてよ!」

涙目になりながら必死に訴えかける。

「悪い、私もどれか覚えてない」

「芽衣が分からんかったら俺らどうしようもないやん!」

頭を抱え項垂れる。

元気くんも楽しみにしていた。

音楽番組を見ながらラジオ体操を踊るくらいには。


「6分の1だろ。確率低いだろ」

そう言うと、ぽふっと1つ目を口にする。

「ぎゃあえ!!」

思わず目を両手で塞ぐ。

ちらりと見てみるとクールに何も言わず食べている。

一瞬顔を歪めた。

「ゴホッ」

「!!!」

明らかに水を探している。

「芽衣、水いる?」

内心ニヤリとしながら問いかける。

そんな私をからかうように答えた。

「当たり」

こちらを見てニヤリと口角を上げる。

残りのシュークリームをもぐもぐと口に放り込む。

「嘘だ!」

だって私は見たから。芽衣が食べているシュークリームの、中のクリームの色が赤いことに。

「当たりって!激辛の当たりでしょ!」

意気揚々と芽衣を鋭く見つめながら叫ぶ。

じっとシュークリームを観察していた元気くんが叫ぶ。

「ちゃう!つむぎ、ほかのシュークリームみてみ!」

そう言われ残りのシュークリームに目を移す。

…なんだかどれもうっすら赤いような。

「分かりづらくするために当たりにも食紅入れたから、色じゃわかんねぇぞ」

1個目のシュークリームを食べ終えた芽衣が満足そうに答えた。


見てダメなら香りだ。

手を仰ぎシュークリームの香りを鼻に近づける。

「あかん!」

「ぶっ!?」

急に鼻を抑えられ後ろに倒れ込む。

「なにするの元気くん!嗅がないと分からないでしょ!?」

神妙な顔つきで告げる。

「匂いで当てたら、なんかおもんないやん」

「美味しいシュークリームが食べたいんだもん!元気くんのバカ!」

元気くんの腕をぽこすかと叩く。

「ここまで来たらロシアンルーレットや。誰かが辛いの当てるまで続けるでぇ…」

地獄だよ!!!

なんでそんなにノリノリなの!


既に芽衣が取ったのは、1番真ん中にあるものだった。

シュークリームはお皿に沿って丸く置かれている。

「…真ん中は辛くないやつって知ってたんじゃないの?」

口を尖らせながら芽衣をじろりと睨む。

「いや、マジでどこにあるか知らない」

手をブンブンと振りながら答える。

………どれだ。

「俺はこれにするで」

そういうと自分からいちばん遠いシュークリームを手に取った。

「じゃ、私これな」

どんどんシュークリームが減っていく。

今お皿に激辛シュークリームが残っているとすれば確率は3分の1…!

口がわなわなと震える。

「どれにしようかな、神さまの言うとおり…」

よくあるおまじないのようなもので決めることにした。

ピタリと止まった指の先には、少しほかより大きめなシュークリームがあった。

「それにしいや」

勝ち誇ったように笑う。

…辛いものを特別に用意するなら、大きいシュークリームにクリームを詰めるはず。

いや、それも嘘?

あえて小さいシュークリームに激辛クリームを入れて騙すっていう方法もあるよね…。

あ、私に激辛シュークリーム食べさせるために私の近くにハズレ置いてる可能性ある。

考えれば考えるほど分からない。

むぅっと頬を膨らませる。

「私が美味しいシュークリーム食べるもん!」

指さした横のシュークリームを手に取った。


「せぇので食べるで」

ゴクリと唾を飲み込む。

これが激辛だったら、私は2人の前で醜態を晒すことになる。

「ビビっとる?」

「元気くんこそ余裕がないから聞いてくるんじゃないですか?」

目の間で火花を散らす。

「ほないくで、せーの」

ばぐっ。

顔から汗が溢れ出す。

口の中が心なしかヒリヒリとするような感覚がある。

「辛いよー!」

「ぎゃははははは!俺のめっちゃ美味いで!」

こんな辛いもの全て食べきらなければいけないのか…!

「つむぎ、それ辛いだろうし残ってるシュークリームも食べとけ」

そう言われ残っていたシュークリームに手を伸ばす。

少しの甘味を感じた。

あぁ、これを食べたかったんだ…

「ンブグッ」

「ん?」

元気くんが首を傾げる。

喉が焼けるかと思った。

唇がヒリヒリする。

手が震えてきた。

「み、ず」

ふらりとおぼつかない足で冷蔵庫から水を取り出しグビグビと飲み干す。

それでもまだ舌は痛い。


「芽衣、激辛はひとつやなかったん?」

机に突っ伏して体から辛さを逃している私の隣で、芽衣に問いかける。

少し考えるような素振りをみせ、肘をつきながら答えた。

「いや、真面目に言うと、激辛はねぇんだよ」

「はぁ?」

耳がピクリと動いた。

「ほな、つむぎは全部思い込みで…」

顔がみるみる熱を帯びる。

「ぎゃははははは!手の込んだことするやん芽衣!最っ高や!」

手をバンバンと叩きながら大声で笑う。

「いや、いつ言おうか迷ってたんだけどな。辛いとか言い出すから…」

吹き出しそうなのを堪えながらこちらを見下ろしている。

「全部っつむぎのっ思い込み………腹痛いわ!」

ヒーヒーと笑う元気くんと、少しクスリと笑う芽衣。

恥ずかしくて顔もあげられない。

「じゃ、今度は真面目にロシアンルーレットやるか」

「今度は甘いって言ってみせる」

元気くんが食べていたシュークリームをぱくりと食べる。

「…これも辛い気がする」

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ここまで読んでいただきありがとうございます。

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