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クローバーの花冠は、だいたいバカでちょっと優しい

「クローバーの花冠作るって、どういう講義やねん」

「私作り方知らないよ」

畑の隣にあるクローバーが生えている場所へ向かう。


「しっかし今日も暑いねん」

雲などなくぬるい風が吹いている。

クローバーが生えているところにしゃがみぴょこんと頭を出している白い花をちぎる。

「一個ずつ重ねて編んでくんだってよ」

芽衣の手の中にはすでに冠とは程遠い形の何かが作られている。

「作り方もわからないしー…」

ぼーっと空を見上げる。

「……花だけ摘み取って教室で作らない?」

「名案だな」


これは何の科目に入るのだろうか。

「先生、これって何個作るんですか?」

「50個です」

「え?」

「ん?」

「は?」

「犬用に、50個作ってください」


50個。

とてつもない数だ。

「大きさが小さいから、まだましか」

「いやこれ、今ある花だけじゃ足りひんで」

まさかそんなに数を作ると思っておらず、持ってきた量は最低限の量だ。


とりあえず今ある分で小さな花冠を作ることにした。

「……花冠って、小さいころ欲しかったんだよね」

手を動かしながらふとつぶやく。

「花冠かぶって、かわいいワンピース着て花畑歩いてみたかったなぁ」

「あー…女子はそういうの好きやな」

「テレビとかで、花冠被って幸せそうに笑ってるの見て、いいなぁって」

「作ってやろうか、人間用」

手元にはすでに出来上がった小さな花冠を持ちくるくるとまわしている。

「いいよいいよ!人間のサイズ作るの結構大変そうだし!そういうつもりで言ったわけじゃないから!」

間違えた。これじゃ、ねだっているみたいだ。

誤解を与えないように必死に手を振った。


皆で足りなくなった分の花を摘みに畑のほうへ戻る。

「かわいいもの欲しいなんて女子やな」

「人並みにはね」

元気くんの私のイメージはどうなっているんだろう。

「ほな、親とかに言えばよかったやん。欲しいって」

「私、死んでから自分のこと言えるようになったから、生きてる頃は言えなかったんだよ」

困ったように笑った。

芽衣がちらりとこちらをみた気がした。


多めに作っても問題ないということで、花はできるだけ摘んできた。

「ただ作るのもあれやし、誰が一番早くノルマ達成できるか勝負しようや」

視線だけ私たちを見つめにやにやと笑う。

「いいよ!私17個作るね!」

「ほな言い出しっぺの俺が17個作るから、芽衣は16個や!」

「了解」


これが意外と難しい。

構造を理解しようとしているのになかなか線になってくれない。これでは輪になるどころではない。

「……芽衣早いね」

「形は微妙だけどな、簡単だよ」

ただひたすらに黙々と手先を動かす。


「芽衣。俺もうちょっと大きい花冠にしようと思っとってな、もう一回取りに行こうや!」

手を動かしにながら提案する。

「十分足りるだろ。犬のパーティーで一回使うだけって言ってたし、立派なもん作んなくていいよ」

「私花いっぱいふにゃふにゃにしちゃったから新しい花欲しい!」

「どう作ったら花がしおれたみたいになるんだよ!」

実際に私が作っている花冠は、なんというか

「着古したTシャツみたいになっとるな」

白い目で私が作ろうともがき続けたモノを見つめる。

「しょうがねえな、元気に作り方教わっとけよ」


芽衣がひとりで摘みに行ってくれた。

その間に元気くんに作り方をたくさん教えてもらった。

これは完璧だ!

「どう?」

きらきらとした笑顔で元気くんを見つめる。

「なんか、茹でたての麺みたいな花冠やな」

「たこになっちゃえ!」


「ほら、少し遠くまで取りに行ってきたから」

バケツの中にはさっきよりも倍近く花があった。


エアコンの音が静かに流れる。

作るスピードだけでいえば圧倒的に芽衣が早い。

「二人とも間に合わなかったら残って作れよ」


一番作るのが遅いのは私だった。

「ほなおさき」

一人で暗くなる空を眺めながら手先を動かした。


「ただいまー」

スンと鼻を動かす。

…おかしい。晩御飯のにおいがしない。

「芽衣、いるー?」

「元気まだ帰ってきてねぇぞ」

私より先に変えたことを告げると二人で首を傾げた。

寄り道する場所なんて特にない。


ガチャリと玄関を開ける音がした。

遅い。

「ただいまー」

「どこ行ってたんだよ、今日晩飯担当だろ」

ジトっと元気くんをみつめる。

「いやな、朝の会話がどうしても気になってな」

朝?なに話したっけ。

変な顔をしながらもじもじと何かを後ろに隠している。


「「…………」」

そこには人間のサイズの綺麗な花冠があった。

「ほら、つむぎが花冠ええなって話しとったやん!?せやから作ったろ思ってな……」

だんだん自信がなくなってきたかのように語尾が小さくなる。

…そっか。

さっきまで晩御飯のことばかり考えていたけれど、そんなことどうでもよくなった。

「ちょうだい!私ほしい!」

思いっきり手を伸ばす。

花冠を私の手の周りをうろつかせたあと、

「おお、ええで、かぶったらええやん」

照れながら渡してくれた。

元気くんが作ってくれた、私の花冠。

窓にうつる自分を見て、思わず顔がニヤける。

「作ってくれたことが一番うれしい!」

そう言いながら花冠をかぶりながらくるりと回った。

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