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   指名打者、ダイアナジャクソン(だいあな じゃくそん) 主にDJ担当


 ワタシは純粋に音楽が好きです。ロックとかナインとか、意味が分かりません。ジャルンの細分化には反対です。音を楽しむと書いて音楽です。それってとても素晴らしい!

 ワタシはただ音楽を流すのが好きです。自分の好きな音楽を、自分の好きなタイミングで、好きなだけ流すのです。時にはリミックスもします。音楽は自由です。与えられた側のものなのです。一度流せばそれまでです。

 だからワタシは、自分で音楽を作るつもりはありません。

 既存の音楽を繋げて楽しむのが、ワタシの役目です。

 時折り個性を出すのはご愛嬌ですよね。

 あの人の顔はよく知っていました。

 半分僕の寝床になっているハコに、あの人は毎晩のように顔を出していました。ある日から店長と仲良しになっていて、僕も会話をしています。音楽知識はそこそこですが、探究心の塊なので会話がとても楽しいんです。

 聴いた事がない音を常に求め、常に音源を探しています。今はいい時代です。それは少し老けてる店長の言葉ですが、僕でさえそう思います。ネットを探せば聞けない音はまずありません。音質の問題はありますが、本物を何度も聞いているあの人には何ら心配がありません。音楽を聴く耳が出来ていると、ペラペラな音源でもある程度の修正を耳がしてくれるのです。

 けれどまぁ、本物には勝てない。

 あの人はそれを理解しているから最高なんです。

 このハコではいつの頃からか毎年店長の誕生会を開く事になっています。

 ワタシがずっとDJとして関わっている一大イベントです。小さなハコですが、大物も多く輩出しています。誕生会にはお忍びで顔を出す人も多いのです。

 チケットが販売されないプライベートパーティーではありますが、誰もが御祝儀を持参します。その代わりドリンクは店長の奢りです。

 当然ギャラは出ません。ゲストにやってくるアーティストも同様です。

 だからワタシは、あの人の言葉に驚きました。当時はまだデヴュー前とはいえ、すでに爆発寸前でした。大きなハコで演奏すれば相当な額のギャラが貰えます。実際にそんなオファーもあったようです。鍵盤の可愛い子がそんな話を教えてくれました。それは自慢でも嫌味でもなく、ただの事実です。

 お前も出るだろ? 店長にそう言われて断った輩は一人もいません。けれど食い気味に日程すら確認せずに引き受けたのは彼だけです。他のメンバーへの確認はするつもりもないようでした。実際にメンバー達は当日になって知らされたようです。毎日のように集まって音を出しているあの人達には突然のライヴも慣れっこで、メンバーが集まらずに困るなんて事もないようでした。

 普段の誕生会ではワタシがDJとしてプレイをして、その合間にゲストが演奏していきます。ワタシは特に目立たずゲストの合間を繋いでいくだけです。ほんの少し演奏を混ぜたり歌ったりするのは愛嬌ですね。

 けれどその年は、他のゲストを呼びませんでした。初めから最後までワタシとあの人達だけで演奏をして盛り上げました。

 最高に楽しい時間でした。リハーサルなんてなく、即興で合わせていくのはワタシ好みです。

 あの人達とは定期的に顔を合わせています。一緒に演奏をする事はたまにしかありませんが、ライヴ前のSE代わりにDJプレイを披露しています。

 ステージ上での演奏をしない理由は一つです。ワタシが入るとあの人達の色が薄まってしまうからです。有名曲のリズムやメロディーが混ざるのは、いい事ばかりではありません。あの人達の演奏が先人の音楽に負けているっていう意味ではなく、更なる進化をしてしまうって事です。それはとても楽しい事ですが、あの人達が進んでいる道とは少しズレているようです。

 まぁそれはワタシやあの人達のファンが勝手にそう言っているだけで、あの人達はそれもありだよねと笑っています。

 ワタシは勝手に十番目のメンバーを気取っていますが、ギャラを別に受け取っているので正式ではないって事です。あの人達のライヴには多くのゲストが参加していますが、一番の出演回数を誇るのはワタシです。それだけは今後も言い続けるつもりです。

 まぁ、SE代わりのプレイもその回数に含んでいる事はご愛嬌です。

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