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ミサ
宗教になんて興味はない。
けれど、誘われればなんだって行くのが俺なんだ。
まぁ、あの演奏を聴いていなければ断っていた可能性はある。あの音は、俺が求めている一つの完成形だった。
パイプオルガンの音をスタジアムで奏でるのが俺の夢だ。パイプオルガンは、ロックにも野球にもよく似合う。
電子オルガンだって嫌いじゃない。けれどやっぱりパイプオルガンなんだよ。こぢんまりとした奴じゃなく、教会の音が最高によく似合う。
俺はその事を、あの日知ってしまった。
横浜の街には大きな教会があり、散歩でそこを横切る事が稀にある。
最後の一人をオルガン奏者にするっていうアイディアは初めから存在していた。アメリカのちょっと文学的な大昔のあのロックグループをイメージしてもらえると解りやすいと思う。
漏れて聞こえるその音に俺の身体は我慢が効かなくなってしまった。
中に入るとその盛り上がりに驚いた。
まるでアメリカ映画だ。日本の教会はもっと静かだと勝手に思っていた。
けれどまぁ、それも無理ないよな。あの音に腰が動かないのはカタツムリくらいだ。動かす腰がなければ仕方がない。
ミサが終わると俺は彼に声をかけていた。
今度ここで一緒に演奏をしたい。そんな感じで声をかけた筈だ。興奮状態の俺は、正直何を言ったのか正確には覚えていない。
けれどまぁ、次のミサへの参加が決まったのは事実だ。
みんなが驚いたのは無理もないが、俺には確信があった。
確かに最高のミサだった。
けれどそれは、あの場所だからなんだよな。
パイプオルガンがあってこそなんだ。教会でなきゃ出せない音が、確かにある。スタジアムでは再現不可能だ。教会を丸ごと建設する以外はな。
だから俺は彼を諦めた。
とは言っても、その関係を完全に断ち切りたくはない。その為にはどうすればいいんだ? 俺は迷い、悩んだよ。そしてその戸惑いを見透かされてしまい、恥をかいた。
それでも彼はいい奴だ。彼女って呼んだ方がいいのか? そんな質問は無意味だ。彼は彼だし、とても可愛らしい。そして俺は、彼が好きだ。まぁ、同じ生物としてではあるけどな。
結局メンバーには誘わなかった。
それでいいんだ。というか、そうする他なかった。正直に言ってしまえば、パイプオルガンの音は完璧過ぎる。まさに天国の詩だ。そんなのは求めていない。この世の詩を模索している。
彼の音は気に入っている。だから時々ゲストとして呼んでいる。いつの日かスタジアムに教会を建設してもいいとは思うが、それは俺達が天国に行ってからでも間に合うと思わないか?




